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悲願の登録 平泉の文化遺産

石見銀山(上) 遺産の保全 誇り持つ住民が先導 2011年6月28日

 

  世界遺産登録の意義は、遺産の保護・保存だ。パリで開かれている第35回世界遺産委員会では、密猟や道路建設計画などで「顕著な普遍的価値」が失われるとして、新たに2件が危機遺産リスト入り。登録後の保全は重要な課題となる。

 2007年に世界遺産登録となった島根県大田市の「石見(いわみ)銀山遺跡とその文化的景観」。銀鉱山跡や街道、大森銀山地区の町並みなど14資産で構成され、自然と共生した「環境に優しい鉱山」というキーワードが登録の鍵となった。

 しかし登録後、環境を脅かす課題を抱えた。急増する観光客に対応し、坑道と同市大森町の町並み地区を往復する路線バスを増便。排ガスや騒音が増え、振動による落石事故が発生した。

 そのため同市などは路線バスを廃止し「歩く観光」の推進を決定。背景には町並み地区を「生活の場」とする住民の保全への強い思いがあった。

 同市大森町は世界遺産登録を目指す以前から、住民が地域の保全活動に取り組んできた。1957年に全戸加入で同町文化財保存会を発足。登録後は保全活動への参加など独自の出店マナーもつくり、「遺跡と自然と人々の調和」のための活動を続けている。

 同県教育庁文化財課世界遺産室の若槻真治室長は「地元住民の意識は高く、自分たちの町に対する誇りも持っている。その思いが保全の取り組みに生きている」と強調する。

 官民協働の活動も盛ん。同県や大田市、民間団体などは05年、石見銀山の保全を目的に石見銀山協働会議を設立。08年3月には継続的な保全管理のために石見銀山基金を創設、募金活動を始めた。

 3億円の目標に対してこれまでに2億6千万円が集まり、11年度に初めて基金を使った活動を予定。団体によるごみ拾いや草刈り、遺跡に由来する伝統文化の保存、振興活動などさまざまだ。

 同協働会議の波多野諭理事長は「遺産を守り続けるためには、民間と行政が同じベクトルで仕組みづくりをすることが大事」と説く。

 「平泉」は今回の登録決議で▽金鶏山と四つの建築・庭園の間の眺望について障害のない状態を維持▽来訪者に関する管理戦略を定めて実施―することなどが要請された。

 世界遺産委員会に参加している平泉町の菅原正義町長は「今後、『平泉』をどう守るのか、責任を強く感じている」と思いを新たにする。

 石見銀山遺跡とその文化的景観 07年に世界遺産登録。国内で14件目、鉱山遺跡としてはアジア初。国際記念物遺跡会議(イコモス)から登録延期の勧告を受けたが「環境に優しい鉱山」をキーワードにし、世界遺産委員会で逆転登録となった。石見銀山は16〜20世紀までの約400年にわたって採掘されてきた世界有数の銀山遺跡。産業遺産として鉱山、街道、港、町並みなどが良好に残されている。核心地域は約530ヘクタール。

【写真=住民による文化財の保全活動が古くから行われてきた町並み=島根県大田市大森町】


 
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