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平泉世界遺産登録 正念場の再挑戦(下)


見つめ直される価値 次代へつなぐ始まり


 「世界遺産は人類共通の『宝物』。『平泉の文化遺産』は素晴らしい価値を持っている。みんなが住む岩手にも宝があることを分かってほしい」

 花巻市の花巻中で25日、1年生を対象に開かれた「平泉授業」。県教委生涯学習文化課の中村英俊文化財・世界遺産課長は強調した。

 県教委は2008年から平泉授業を実施。県内の児童、生徒に世界遺産の意義や平泉の価値を広く伝えている。

 授業を受けた千田萩也(しゅうや)君は「岩手にも世界に誇れる遺産があると知り、応援したいと思った」と振り返った。

 世界遺産は、自然や文化財を守っていこうと国連教育科学文化機関(ユネスコ)が定める。1960年代、エジプトのナイル川にダム建設計画が持ち上がり、水没するヌビア遺跡を移築したことをきっかけに72年、ユネスコ総会で世界遺産条約が採択された。

 ともすれば、観光面にのみ注目が集まるきらいもあるが、国内では一時的に観光客が増えたものの、登録後に減少する事例もある。2007年に登録された石見(いわみ)銀山(島根県)は、08年に81万3千人と前年より約10万人増えたが、09年は56万人に落ち込んだ。

 久慈広域観光協議会の貫牛(かんぎゅう)利一観光コーディネーター(49)は「県外の人が平泉に目を向けてくれれば、久慈を伝えるきっかけにもなる」と波及効果を期待する一方、「平泉の価値は思想的なものを含んでおり、他地域の人にとって理解が難しいかもしれない」とも感じている。

 地元の平泉町では08年7月の「登録延期」以降、原点回帰ともいえる動きが出ている。

 今月16日には「平泉 浄土のあかり」と題して観自在王院跡で夢あかりをともし、先祖や奥州藤原氏に思いをはせる行事があった。

 町民有志でつくる「平泉なのはな会」は、中尊寺へ「不滅の法灯」の菜種油の奉納を目指し、休耕田で菜種を栽培している。

 不滅の法灯は、最澄が京都の天台宗総本山・比叡山延暦寺にともして以来、約1200年間ともり続ける。1958年に中尊寺が天台宗東北大本山の称号を与えられた際、分灯された。

 「登録延期になったことで、自分たちの町の価値に目覚めた町民も多い。藤原清衡が中尊寺建立供養願文(がんもん)に込めた平和の願いを再確認し、住民主体のまちづくりにもつながっている」と平泉観光協会の畠山勝彦事務局長は力を込める。

 世界遺産登録はゴールではなく、次世代に受け継ぐ宝を守っていくためのスタートでもある。遺産を守り続ける「心」を持つ人づくりこそが、これからの重要な取り組みとなる。

(報道部・阿部友衣子)

【写真=花巻中で開かれた平泉授業。世界遺産の意義や「平泉の文化遺産」の価値を広く伝える取り組みが進んでいる=25日】

(2010.8.30)

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