| A審査の厳格化 新規抑制の傾向反映 |
2008年7月9日 |
「昨年の経験を考えると、全体として審査、登録基準を厳格に適用する流れが加速しているのは間違いない」
「平泉の文化遺産」に下された「登録延期」決議。国連教育科学文化機関(ユネスコ)日本政府代表部の近藤誠一大使は「世界遺産の壁」を痛感した。
現在、851件に上る世界遺産。「平泉」に対する厳しい評価は、増加の一途をたどる近年の世界遺産事情も影響した。
ユネスコは、保全管理を可能な規模にするため新規登録を抑制する傾向にあり、年々審査は厳しさを増している。
最近の登録率は2004年が82%、05年68%、06年64%、07年63%と年々低下。今年の国際記念物遺跡会議(イコモス)勧告も、候補43件(拡張案件を除く)のうち「登録」は21件と厳しいものだった。
抑制傾向を反映するように、登録基準の厳格な適用が求められ「平泉」は苦戦した。加えて、「登録基準は欧米の考え方でつくられたルール」(近藤大使)。「浄土思想」をはじめとする価値証明には理解の壁が立ちはだかった。
登録基準は年々、少しずつ変わっているという。それを推薦国は見極め、審議に臨むことが必要だ。「次の推薦書は、さらに気を引き締めてつくらなければならない」。文化庁の大西珠枝文化財部長は肝に銘じる。
今回の世界遺産委員会には、「富士山」の世界遺産登録を目指す民間非営利団体(NPO)や行政関係者の姿があった。
山梨県と静岡県は昨年に続き2年連続で世界遺産委員会に職員を派遣。山梨県の荻野貴史副主査と静岡県の岡村敏彦主査は「富士山をアピールしたり、世界の価値観を研究することが目的。登録に向けて早め早めに動くことが大事」と準備を進める。
NPO関係者は富士山のパンフレットを配るなど、価値のアピールに奔走。「平泉の後に続く日本の候補地は自分たちだ」と存在感を示す。
3年後の本審査に向けて、再出発した「平泉」。「登録」を確実なものにするためには、世界の潮流を見極める力が求められる。
【写真=「平泉の文化遺産」の世界遺産登録が審議されたユネスコの第32回世界遺産委員会。審査は年々厳しさを増している=2日、カナダ・ケベック】
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