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TPP大綱 「食料安保」を問い直せ


 保護主義の動きが世界に広がる中、自由貿易の旗を高く掲げ続ける。そのために「わが国が率先して世界に範を示す」という。

 政府が「総合的なTPP(環太平洋連携協定)等関連政策大綱」を決めた。一昨年にも策定したが、欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)対策を追加した。

 2年前とTPPや自由貿易を巡る環境は大きく変わっている。自国の産業を守ることを第一とするトランプ大統領が生まれ、米国は環太平洋の枠組みから抜けた。

 やむなく日本は、米国抜き11カ国での協定を参加国に呼び掛けた。だが大筋合意に至った先月の会議では、カナダの反乱で首脳会合を開けず、足並みは乱れている。

 「自由貿易を守る」理想はいいとしても、米国の復帰を期待して何とかまとまっているのが実態だ。全ての内容が固まっていないのに合意を取り繕った印象が強い。

 新TPPで国内農業はどの程度の打撃を受けるのか。秘密交渉で情報が限られる上、影響試算も示されていない。合意が妥当かどうか、国会での議論もこれからだ。

 2年前と同様、影響試算の前に対策が打ち出され、順番が逆になった。農業者の不安を和らげる狙いとしても、違和感は拭えない。

 大綱は、日欧EPA対策として畜産・酪農支援が柱となる。ブランド力の強い欧州産チーズの輸入増は避けられず、国産チーズと原料乳の高品質化を後押しする。

 経営安定化策としては、牛・豚肉生産者の赤字穴埋めを今の8割から9割に上げる。既にTPP対策で決まっているが、日欧EPAが先に実施された場合も行う。

 農林水産物・食品の輸出額1兆円を目指す輸出促進策も盛り込んだ。欧州に対して畜産物の検疫緩和を働き掛け、国内の環境も整える。

 自由貿易協定にかかわらず、いずれも必要な対策ではある。国内にとどまらず、海外にも活路を求めていく。農業の基盤を強くすることに国民の間で異論はなかろう。

 欠けているのは「食料安全保障」の視点だ。日本が自由貿易の旗を振り続ければ、海外からの食料輸入は増え続ける。極めて弱い国の食料自給をどうしていくのか。

 既に国内の農業者はみるみる減っている。政府が唱える「強い」「攻めの」農業だけでは、流れを押しとどめることはできない。多様な担い手を育て、産業としての厚みをつくり直す必要がある。

 だが今年、政府の基本方針から「食料安全保障の確立」が消え、政権の消極的な姿勢が見える。自由貿易を推し進めるなら、食料安保を問い直すことは避けて通れまい。

(2017.12.6)

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