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受動喫煙対策 「おもてなし」看板倒れ


 2020年東京五輪・パラリンピックに向け、受動喫煙対策強化は欠かせない。国際オリンピック委員会(IOC)と世界保健機関(WHO)は「たばこのない五輪」を目指すことで合意し、08年以降の開催国では、罰則を伴う規制が導入されてきた。

 果たして日本に、開催国としての自覚はあるのか。対策強化に向けた健康増進法改正案の中身が、どんどん後退している。このままでは、世界中の人々に対する「最高のおもてなし」が看板倒れだ。

 受動喫煙は、肺がんやぜんそく、心臓病、脳卒中などのリスクが高まる。そもそも、吸わない人にとって迷惑極まりない。国は、国際基準に程遠い現状を自覚し、特に子どもやがん患者らの身になって対策を強化すべきだろう。

 改正案をめぐっては、厚労省が今年3月、喫煙できる飲食店を未成年が利用しない30平方メートル以下のバーやスナックに限る案を公表したが、自民党や飲食店業界は、客が減るなどとして反発した。

 五輪前の改正法施行を目指す厚労省が譲歩し、飲食店は専用の喫煙室を除いて原則禁煙だが、店舗面積150平方メートル以下なら店の判断で喫煙可にできるなどとする妥協案を提示。来年の通常国会に改正案を提出し、来春の成立を目指す考えだ。

 だが「店舗面積150平方メートル以下」では、あまりに広すぎるだろう。家族客が訪れる店が多く含まれることになり、健康被害が子どもにも及ぶのは必至だ。

 その点、東京都の規制案は国際基準に近い。多くの人が利用する施設を原則屋内禁煙とする罰則付きの受動喫煙防止条例を制定する方針だ。都の案をベースに、厚労省と自民党は再検討すべきだろう。

 とりわけ受動喫煙がつらいのが、がん患者だ。医療の進歩で、働きながら通院している患者は増加しており、推計32万5千人に上る。

 厚労省の妥協案では、飲食店従業員の受動喫煙も懸念されることに加え、飲食店で働きたいと願う患者にとっても選択肢が奪われてしまう。

 5月、受動喫煙防止策を議論した自民党厚生労働部会で、たばこの煙に苦しむがん患者に関し「(がん患者は)働かなくていい」とのやじが飛び出したことは象徴的だ。

 がんと仕事の両立支援を打ち出した改正がん対策基本法の成立から間もなく1年。企業の理解の乏しさなどを背景に、退職に追い込まれる患者は多い。患者が働きやすい環境づくりを進める上でも、対策強化が求められる。

 もとより、喫煙者の自覚なしに受動喫煙は防げない。街を歩けば、路上喫煙している人があちこちに見受けられる。マナー向上が急務だ。

(2017.12.5)

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