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ミサイル避難訓練 ちぐはぐな印象がある


 朝鮮半島情勢が緊迫の度を増す中、政府の呼び掛けに応じ全国各地で住民避難訓練が行われている。北朝鮮が発射した弾道ミサイルが日本に飛来する−との想定だ。

 先月29日には、日本をまたぐ形での発射を受け全国瞬時警報システム(Jアラート)が作動。本県など東日本の12道県の住民が避難対象となったほか、今月3日には6回目の核実験を強行。9日の建国記念日や10月10日の朝鮮労働党創建記念日に合わせた動きも警戒されている。

 パニックを最小限に抑え、身を守るために何をするべきか。一人一人が最善策を学んでおくことに損はない。

 しかしながら、どうにも違和感が拭えない。Jアラートの配信は北海道から北関東、長野まで。東日本全域を網羅しながら東京周辺は対象外だった。ここまで範囲を広げながら、首都圏を警戒対象にしない手はあるまい。

 安倍晋三首相は「動きを完全に把握」と言い、小野寺五典防衛相は「わが国に向けて飛来の恐れがない」から迎撃しなかったと説明した。人口集積地の混乱を避けた理由にはなろうが、それならなぜ、これほど範囲を広げたのか。

 仮に戦争状態になった時、軍事関係の専門家らが攻撃目標となる危険性を指摘するのは官邸がある東京都心をはじめとする大都市圏、在日米軍基地や原子力発電所の周辺などだが、危機感が共有されているようには思われない。

 朝鮮中央通信は、北朝鮮が新型ミサイルの量産と軍部隊への投入を宣言した今年5月の報道で「米本土とともに在日米軍基地に照準を合わせ、壊滅的な発射の瞬間だけを待っている」と論じてもいる。攻撃するなら、よりダメージの大きい目標を設定するだろうことは、軍事の素人でも容易に想像が付く。

 自民党の竹下亘総務会長は北朝鮮の米領グアム周辺への弾道ミサイル発射計画に関連して「広島はまだ人口がいるが、島根に落ちても何の意味もない」と発言。野党などの批判に発言撤回を拒否した上で「北朝鮮にとって島根は軍事的、戦略的に価値がないという意味だ」と説明した。

 いかにも軽率な物言いながら、意図するところは分からないでもない。竹下氏の解釈に倣えば「北朝鮮にとって価値がある」場所で訓練がほとんどない現状は「何の意味もない」ことにならないか。

 安倍首相は、日本の北朝鮮対応は実力行使も示唆する米政権と「完全に一致」と強硬姿勢だが、原発制御の方途も示さないなど有事を想定した対応の現実はちぐはぐな印象が拭えない。基地や原発があるから危険−とは認め難いとしたら、それは国家の論理。「国民保護」に値しない。

(2017.9.7)

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