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自民の改憲論議 「数」より「信頼」が先決


 憲法改正に関し、安倍晋三首相は内閣改造後に「スケジュールありきではない」と、自身が示していた2020年の改正憲法施行に向けた議論の先送りを表明した。

 衆参で、いわゆる改憲勢力が総議員の3分の2を超え、数の上では国会発議が可能な現状は絶好機に違いない。しかし、党の熱意が国民の意思を反映するとは限らない。

 数度の国政選挙を経て国民が与党に多数を与えたのは、改憲への期待が主ではない。支持率を失って、ようやく庶民目線に思いが至ったと言えようか。もっとも、これで自民党の改憲論議が減速するとすれば、それ自体が「安倍1強」の証明ではある。

 自民党が大惨敗を喫した先の東京都議選を象徴として、「自民1強」は国民の厳しい視線を浴びている。

 それは閣僚や所属議員に相次ぐ不祥事に現れた「緩み」への批判であり、近くは共謀罪の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法の成立強行に見られる「おごり」への強い反発だ。さらには安倍首相周辺の関与が疑われる学校法人の問題や防衛省の日報隠蔽(いんぺい)問題で、不明朗な政府説明に高まる疑念もあるだろう。

 憲法論議は、政局にはそぐわない。かねて衆院憲法審査会の森英介会長(自民党)が言うように「静かに議論する環境」が必要だろう。それは同時に、改憲が決して「数の力」で強引に進めるべきものではないことを示唆する。

 安倍首相は今年5月3日の憲法記念日に合わせ、改正憲法の2020年施行を提唱した。党総裁任期は来年9月、衆院任期は同12月で満了だ。当初の想定通り来年1月召集の通常国会で改憲を発議できれば、その是非を問う国民投票は、衆院解散のタイミング次第で現任期中に総選挙と同時実施−といった可能性も伝えられていた。

 だが「日程ありき」の憲法論議には、かねて与党内にも反発があった。公明党の山口那津男代表は「政権の課題はアベノミクス。憲法は政権として取り組むものではない」と先走りを戒める。確かに、これでは順序が逆だ。

 特定秘密保護法や集団的自衛権の行使に道を開く安全保障法制、「共謀罪」などの審議で見せた「1強」の政治手法は、都議選の街頭演説で、やじる聴衆に向かって「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と言い放った首相の言動に重なる。説得によらず力でねじ伏せる発想だ。

 「敵」を敵と見なしたまま対立を深める手法は、憲法論議を汚す。国民に広く信頼されない政権に、改憲を語る資格はない。「数」より、それが先決。まずは首相周辺を含め、政権を取り巻く疑念にきちんと対応することだ。

(2017.8.12)

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