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核禁止条約 廃絶は夢物語ではない


 1万5千発。地球上の核弾頭の総数だ。その使用も保有も「非合法」とする核兵器禁止条約が、国連で開かれた条約交渉会議で採択された。

 核保有国とされる9カ国は条約に反対や無視。交渉にも参加していないため、すぐには実効性がないかもしれない。しかし、広島、長崎への原爆投下から72年が過ぎて人類がたどりついた歴史的な一歩を歓迎したい。

 条約は核兵器の保有と使用はもちろん、製造、実験、配備、移転も禁じる。核兵器による威嚇も許さない。

 注目は前文だ。「核兵器使用の被害者(ヒバクシャ)の受け入れ難い苦しみと被害に留意する」。条約の精神的な基盤として、日本の被爆体験を据えた。

 条約交渉を促したのは「核の非人道性」の議論だった。この前文は、核兵器による悲劇は広島と長崎で最後にしたいという、国際社会の決意を示している。

 残念ながら、交渉会議の場には唯一の被爆国、日本の姿はなかった。

 安全保障上の脅威があり、抑止力に影響を及ぼしかねないという「現実論」が核保有国を支配する。米国の「核の傘」の下にある日本や韓国などの国々も同じ論理で背を向けた。

 折から、現実的な脅威となっている北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)が発射された。マティス米国防長官が日本側に約束したのは、日本防衛の「揺るぎない責務」と「核の傘」を含む抑止力の提供だった。

 当面、核保有国と非保有国の間の溝は埋まる見通しはなさそうだ。米国は日本などの同盟国に対して、交渉どころか条約採択後の関連会合への欠席を求めていることも明らかになった。

 しかし、100カ国以上が賛成してつくり出した「核の保有そのものが非合法」という局面は、核保有国とその同盟国への圧力として働いてくる可能性がある。

 条約は、核保有国が将来的に加盟する道も示した。松井一実広島市長はこの「扉」を評価。核保有国が核軍縮、そして条約締結に進むことに期待を示した。

 現在の核による威嚇といがみ合いから脱却するには、各国の指導者のリーダーシップが重要な鍵となる。彼らを動かすには国際世論、そしてそれぞれの国内世論であることは言うまでもない。

 敵国との核のバランスが危うくなったとき、向かう先は核開発競争でしかない。際限のない競争と、核をなくす道のどちらを選ぶのか、世界が試されている。

 一度は歩み出したことがある「核兵器なき世界」を夢物語で終わらせまい。

(2017.7.9)

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