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「共謀罪」成立 おごり極まる議論封じ


 国論を二分する重大な法案を、国民が熟睡している時間帯に、国民が理解に苦しむ方法で成立に突き進んだ自民、公明両与党の国会運営に疑義がある。

 監視社会化への国民の強い懸念から、国会で過去3回廃案となった「共謀罪」を「テロ等準備罪」と呼称変えした改正組織犯罪処罰法は、数ある疑問や不安の声を押しやって、15日朝の参院本会議で可決、成立した。

 自公両党が繰り出した「中間報告」という手続きは、国会法に定めがある。直近の実施例は第1次安倍政権下の2007年6月。衆院で4回、参院では18回あるという。近年はともかく国会対策上の手段としては珍しくない。

 特異なのは、国会法にある「特に必要があるとき」への与党側の説明が一切ないことだ。加えて、従来は与野党対決型の法案で野党出身委員長が採決に応じない場合の与党の対抗手段として活用されてきた。今回、法務委の委員長は与党公明党の議員だ。

 同党が重視する東京都議選の告示が23日に迫る中で、イメージ戦略上、同党が仕切る委員会が紛糾する事態を避けた−という見方が取り沙汰されるゆえんだ。これが本当なら、本会議で強行批判の矢面に立たされた金田勝年法相はいい面の皮だろう。

 会期最終盤の駆け引きの産物とはいえ、会期延長の選択肢もある中で、実質的な議論の場である委員会の採決を理由なくすっ飛ばし、極めて簡易な委員長報告だけで本会議で賛否を問うのはいかにも乱暴。それも真夜中だ。政権の国会軽視は、すなわち国民軽視と言わざるを得ない。

 かつて「共謀罪」の対象犯罪は600を超え、適用対象は「団体」だった。解釈次第で市民運動や労働組合が摘発対象になる−との批判が巻き起こったのは当然だ。

 今回、政府は対象犯罪を277に絞り、適用対象を「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と限定的に書き換え。単なる共謀だけでなく、犯罪を実行するための資金集めや物品調達などの準備行為を要件に加えた。

 これをもって政府、与党は「一般人が対象になることはあり得ない」と強調する。しかし国会での議論が具体論に及ぶほどに、判断基準のあいまいさを露呈。拡大解釈や恣意(しい)的運用など、捜査機関の裁量で処罰対象が拡大する懸念は払拭(ふっしょく)されていない。

 「持ち物がビールや弁当なら花見、地図や双眼鏡などなら犯罪の下見」と金田法相は言った。これで一般人が監視対象にならないとなぜ言い切れるのか。根拠も希薄なままに「あり得ない」の一点張りで議論を封じるのは、おごり以外の何ものでもない。

(2017.6.16)

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