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自民の改憲熱 誰のためにする議論か


 自民党の憲法改正論議が加速している。同推進本部は2020年の改正憲法施行を目指して態勢を強化。年内に党の改憲案を取りまとめ、来年の通常国会で衆参両院の憲法審査会に示す段取りという。

 党総裁でもある安倍晋三首相は、先月3日の憲法記念日に改憲を訴える保守系団体が開いた会合にビデオメッセージを寄せ「20年を、新しい憲法が施行される年にしたい」と表明した。党推進本部が想定する作業スケジュールは、そこからの逆算だ。

 議論の中心は、不戦を定めた9条への自衛隊明記、高等教育無償化、大災害など有事に内閣の権限を強化する緊急事態条項、参院選「合区」解消の4項目。さらに8日の衆院憲法審では、党を代表して根本匠元復興相が「天皇を元首と位置付けることもあり得る」との認識を表明した。

 対象区を中心に地方に反発がある「合区」に関する議論はさておいても、各項目でどこまで国民の意思をくみ上げたものか判断し難い。

 この状況で衆院憲法審委員の古屋圭司党選対委員長は、憲法審での改憲項目絞り込みでは「採決も必要」と発言。衆参とも与野党の丁寧な合意形成を重視してきた憲法審の在り方に異論を唱えた。

 唐突とも思われる発言には批判が多く、古屋氏は「個人的な意見」と釈明したが、早期改憲へ気がはやる党内の空気は隠しようがない。その発端にある首相発言は、いかに「党総裁の立場」を強調しようが現実的に立法府たる国会の議論を扇動している。

 行政府の長である安倍首相は、かつて自らを「立法府の長」と述べて、訂正したことがある。対野党でも党内でも「1強」が続く中で、実感が口を突いたに違いない。

 推進本部の拡充により新たに幹部会に加わった石破茂元幹事長は、テレビ番組で「改憲を一部の者で決めていいはずがない」と発言。所属する全ての国会議員が意見表明できる場を確保すべきとの考えを示した。ポスト安倍の有力候補とされる立場で、存在感を示す意図はあるにせよ、その主張には道理がある。

 幹部会メンバー21人の中には、首相に近い議員が多く含まれる。中核は、党総裁任期の延長を主導、首相の連続3選に道を開いた高村正彦副総裁。党内からは「20年の改正憲法施行へ、首相官邸が仕切ると宣言したようなもの」との見立ても聞こえてくる。

 推進本部の掲げる検討項目は、安倍首相が折に触れ主張してきたものばかり。「ご意向」に、これまで憲法審で積み重ねてきた議論がかき消されるようでは、いよいよ国会の権威も失われよう。誰のためにする議論か。全所属議員は自問してもらいたい。

(2017.6.9)

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