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「共謀罪」衆院通過 理解は得られていない


 国会で過去3度廃案になった共謀罪の趣旨を盛り込んだ「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案が衆院を通過した。政府、与党は参院での審議を急ぎ、今国会での早期成立を目指す。

 法案は先週末の衆院法務委で、与野党の怒号が飛び交う中で可決された。与党は「議論は尽くされた」とし、野党は真逆の見解に立つ。

 直後の共同通信世論調査では、法案に「賛成」が39・9%、「反対」41・4%で拮抗(きっこう)するが、これまでの政府説明には「不十分」とする回答が77・2%と圧倒的。勢い、今国会中に「成立させる必要はない」が56・1%を占める。

 一方で、内閣支持率は4月調査からやや下がったものの55・4%と安定。自民党支持は2・9ポイント増の42・8%、民進党は0・6ポイント減の6・1%だ。安倍晋三首相に、支持率を盾に野党の追及を受け流す場面が目立つゆえんだ。

 しかし政府、与党が見なければならないのは、政府説明を「不十分」とする世論の受け止めだろう。それは自民、公明支持層でも70%前後。国民理解が得られないまま、支持率を背景に「1強」の勢いで物事を決めるのでは、国会の議論は意味を失う。

 政権が説明を尽くさなければならないのは、なぜ今、新たに立法が必要なのかという根本的な問題だ。「国際組織犯罪防止条約を締結するための前提」との説明は、共謀罪として法案を提出した当時から変わらない。変わったのは立法の必要性だ。

 一度ならず廃案となった共謀罪の呼称では、さすがに世論が許さないと判断したのだろう。本来の立法事実ではない「テロ対策」を前面に打ち出し、2020年東京五輪を持ち出して必要性を強調。これまで「国際条約の規定で減らせない」としてきた対象犯罪も半分以下に削った。

 テロ対策としながら、当初の政府案には「テロ」の表記がなく、与党の指摘を受けて「テロリズム集団その他の犯罪集団」と、適用対象でテロに言及した経緯もある。

 そもそも国際条約は、マフィアなどの経済犯罪への対処が目的。その締結に必要とされる法整備は、基本的にテロ対策が主眼とは言えない。

 テロ対策も国際条約の締結も、既存の法体系で対応可能との有力な指摘もある。衆院の審議で、立法の必要性に関わる種々の論点が解消されたとは到底認め難い。特に金田勝年法相の頼りない答弁は、法案への世論の不安や不信をかき立てた。

 議論は参院に移る。立法の目的が判然としない限り、監視社会強化の懸念は払拭できまい。政府には過去の議論との整合性も念頭に、説明を尽くしてもらいたい。

(2017.5.24)

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