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<大震災6年>再生への視座 「時差」励ます支援策を


 安倍晋三首相が今日12日、本県被災地を視察する。「東北の復興なくして日本の再生なし」と語る首相には、復興を主導する一方の当事者として、限られた時間だからなおさら現状に目を凝らし、耳を澄ませてもらいたい。

 巨大防潮堤の建設や大規模な盛り土による新市街地造成など、ハード面の「復興」ぶりには目を見張る。一方で生業の再生など、住民生活に密着するソフト面の「復興」は地域で、あるいは個人ごと格差が広がりつつある。

 地震、津波、原発事故の複合災害で、賃貸住宅や親族などに身を寄せる人も含め、避難生活を送る人は全国で12万3千人。これが発災から丸6年の重い現実だ。

 1月末現在、県内の仮設住宅は「みなし仮設」を含めて6千戸を超え、1万3千人以上が暮らす。このうち7市町の170戸が、住宅再建の意向を決めかねている。地元を離れ、帰郷すべきかどうか迷いが増すケースもある。

 災害救助法に基づく仮設住宅の利用期間は原則2年。仮住まいの限界を勘案して導き出した数字なのだろう。しかし6年。さらに長期化を余儀なくされる人々がいる。

 阪神大震災では、発生から5年で仮設が解消された。それでも十分長すぎるのに、教訓は生かされなかった。

 そもそも復興のテンポの違いを一律に「格差」と呼ぶのは適切かどうか。ひと駅ごとに町の雰囲気が違うように、沿岸は入り江ごとに異なる歴史や暮らしがある。被害の程度も違えば復旧・復興への考え方も違う。あえて言うなら「時差」の方がなじむ。

 「時差」ならば、向こうが昼で、こちらが夜明け前でも決して慌てることない。いずれ日は昇り、明るさを増す。被災者の生活意欲をいかに励ますか。それは発災当初から不変の課題であり、これからいよいよ重要性を増す。

 復興は民主党政権下、阪神大震災の「創造的復興」を踏襲して始まり自民党政権が引き継いだ。しかし「東北の復興なくして−」との鼓舞は、「東北」とひとくくりにする裏で個別の状況がかすむ懸念を内包する。復興予算が復興以外にも回り、被災地をなえさせたのは記憶に鮮明だ。

 「答えは現場にある」。発災直後から、達増知事は繰り返し口にしてきた。漁港復旧に当たり、国が港の集約を企図したのに対し、被災漁港全ての存続にこだわったのは一つの「答え」に違いない。

 生活再建は、これからが正念場。安定した暮らしの連なりがよりよい地域を築き、日本を形づくる。防潮堤や土地造成は復興の足掛かり。国も「現場」に立ち続け、しっかり被災地を支えてほしい。

(遠藤泉)

(2017.3.12)

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