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<大震災6年>復興と憲法 最後の一人まで支える


 大船渡市の印刷業金野広充さんが、自治会長を務めた山馬越(やままごえ)仮設住宅を出たのは2年半前。市内の仮設住宅の集約に伴って昨年撤去されたが、転居者のその後が今も気にかかる。

 「元気のある人、若い人、お金のある人が仮設を早く出て行く。でも、弱者と言われる人は残ってしまう」。3年暮らした間は自殺や孤独死、アルコール依存などの問題に直面し、頭を悩ませた。

 東日本大震災から丸6年。大津波ですべてを流された街の再建が進んでいる。防潮堤は28%が完成し、72%が工事中だ。災害公営住宅は75%が完成。市町村の小中学校は88%が復旧。新規登録漁船は目標の97%を達成−。

 数値に表れる復興事業は着実に進んでいる。自宅を再建し、生活を取り戻した人も多い。しかし、そこから遅れてしまう人々も確実にいる。

 「以前はそうした弱者を地域や家族が支えていた」と金野さんは言う。地域のお年寄りが子どもたちを預かり、大人たちは安心して働くことができた。互いにいろんな「お裾分け」をするご近所の関係もあった。

 しかし、震災はそうした人のつながりをばらばらにしてしまった。一緒の速度で歩いていけない人々をどう支えるかが、これからの大きな課題となる。

 それは復興の在り方に関わる。復興とは何か。もう一度確認しておく必要がある。

 「一人一人がちゃんと復興しなければ、復興したとはいえない」と達増知事は語る。根底には、震災発生から1カ月後に定めた「復興に向けた基本方針」がある。

 基本方針を貫く原則の一つにこうある。「被災者の人間らしい『暮らし』『学び』『仕事』を確保し、一人ひとりの幸福追求権を保障する」。被災4日後には胸の内にあったと述懐する。

 生命、自由、幸福追求に対する国民の権利をうたう憲法13条と同じ構造だ。この前段には「すべて国民は個人として尊重される」という条文がある。

 震災時で解釈すれば、すべてを失った被災者が自立できるまで支援していくことだろう。「幸福を追求する最低限の基盤となる衣食住や生業(なりわい)を整えることが欠かせない」と知事は言う。

 「震災前よりもいい街にしなければ亡くなった人に申し訳ない」と金野さん。「そのためにも、遅れがちな人々を見落とさず、背中を押して自立してもらわなければ」と強調する。

 最後の一人までが穏やかに暮らせる「人間の復興」を最終目標として掲げたい。施行70年の憲法の精神が大きな意味を持つ。

(村井康典)

(2017.3.11)

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