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大学無償化 なぜ改憲が前提なのか


 大学など高等教育の無償化をめぐる論議が、にわかに注目を集めている。自民党内で憲法改正による実現の検討を進めているからだ。

 安倍晋三首相が施政方針演説で訴えた「誰もが希望すれば高校、専修学校、大学に進学できる環境を整えなければならない」という理念は素晴らしい。しかし、先進国の中で大学教育に対する公的負担割合が低く抑えられてきたこれまでの政策を考えると、唐突感が否めない。

 何より改憲が絡む点が疑問だ。改憲によって幼児から高等教育までの無償化を唱える日本維新の会に接近し、改憲論議を加速させる狙いが指摘されている。

 高等教育のための国の施策としては最近、大きな成果があった。給付型奨学金の創設で、2017年度予算で70億円の基金をつくる方向だ。しかし、道のりがスムーズだったわけではない。財政面で難色を示されながら、ようやく実現したと言っていい。

 全国の国・公・私立の大学や短大が学生から徴収している授業料は年間3兆円を超すという。無償化にはこの負担分などの財源が必要になる。給付型奨学金に比べてはるかに大きい規模だ。

 自民党の特命チームでは「教育国債」を発行する案が浮上しているが、借金に頼ることに党内から慎重論も出ている。

 全大学を対象にするなら運営に対する評価の強化も欠かせまい。問題が指摘される大学が少なくないからだ。

 人を成長させ、社会の明日を築く基盤である教育。義務教育については憲法によって授業が無償になっている。

 そして、教科書無償化法、高校無償化法により無償の範囲を広げてきた。このほか、経済的な理由で就学が困難な世帯に対しては就学援助制度があり、給食費や運動着代などを支給している。

 大学などの高等教育も改憲せずに無償化は可能ではないか。それでも掲げるのは、教育を突破口に改憲の機運を高めようとしているのではないかと勘ぐってしまう。

 もちろん、将来に向けて議論は大いにすべきだろう。他の政党も前向きだ。現状や課題を国民に提示しつつ、議論を深めてもらいたい。

 ただ、先にすべきは奨学金の充実と思われる。所得の低い学生への給付型奨学金と異なり、一律の学費無償化は、進学者の多い裕福な層に手厚い施策ともなるからだ。

 国による給付型奨学金の枠はまだ小さい。また、大学生の約4割が利用する貸与型では有利子の方が多い。貸与は無利子とし、給付型を拡大することが切実に求められている。無償化はその延長線上にあると捉えたい。

(2017.3.3)

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