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ふるさと納税 制度の「ひずみ」直視を


 所得税などの確定申告受け付けが行われている。申告が必要な人にとっては税の重みを実感する時期だ。

 最近論議を呼ぶ税がある。ふるさと納税。2008年に始まった制度の利用は、年収などに応じた寄付上限額の引き上げや手続きの簡素化などにより、この2、3年で急拡大した。16年度の総額は2千億円を上回る勢いで、過去最高を更新する見通しだ。

 内情を見ると複雑な思いを抱く。本来の趣旨からそれた感が強いからだ。「故郷への恩返し」「応援したい自治体のため」の寄付というより、「返礼品目当て」の側面が強くなっている。自治体間では税の奪い合いになる。

 多くの寄付を行う高所得者ほど恩恵に浴することができる点に批判が出ており、自治体からも是正を望む声が上がる。制度の「ひずみ」を政府は直視すべきだ。

 共同通信が全国の自治体に行った調査では、「評価する」が「評価しない」より多かった。だからといって、このままで良いと思っているわけではない。返礼品の競争過熱に対する危機感がある。

 制度の今後について、多くの自治体が上限価格制限などの是正を求めている。返礼品代がかさみ、寄付額に対する比率が4割にも上る現状では当然だろう。本県の自治体も制度を評価しつつ、多くが是正の必要性を感じている。

 自治体全体とすれば、本来使えるはずの税収が返礼品の負担に応じて減少。一方、税収減の自治体に対して国が補填する仕組みがあるため、広く国民の負担も伴う。

 各自治体の合理的な選択が国全体として悪い結果をもたらす構図は、「合成の誤謬(ごびゅう)」と言えよう。

 一生懸命な自治体に水を差したくはない。しかし、「仁義なき戦い」は消耗戦の様相を呈す。高所得者に対する何らかの制限など軌道修正する必要があるのではないか。

 返礼品が地域の特産品の掘り起こしや増産につながった点は、確かに効果をもたらした。しかし、他の自治体から移った税金で買い取る形だ。

 仮に、制度の劇的な改変や撤廃があれば、増産した産品の行き場はどうなるのか。純粋な経済活動で増えたわけではないだけに、はしごを外されたとき、目も当てられない事態ともなりかねない。

 ふるさと納税が意義を高めるのは災害時だ。東日本大震災発生後は本県などで急増。昨年も地震被害の熊本県や、大火に見舞われた新潟県糸魚川市などで大きく伸びた。趣旨にかなう好例と言える。

 高市早苗総務相は、返礼品に不適切な例が見られるとして是正策を検討する考えを示した。実効性ある方策を早めに打つ必要がある。

(2017.2.17)

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