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法務省文書 「共謀罪」は引っ込めよ


 民進党は、南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報問題と文部科学省の組織的天下り、そして「共謀罪」をめぐる法務省文書問題を「隠蔽(いんぺい)3点セット」と呼び、日米首脳会談を受けた14日の集中審議でも追及の構えだ。従来なら、これほど不利な材料がそろえば内閣は持つまい。

 だが政府、与党に所管大臣の辞任など野党側の要求に応じる気配はない。強気の背景に「1強多弱」の政治情勢があるのは論をまたない。

 「最後は数の力」。そんな思惑が垣間見えたのが、金田勝年法相の指示で書かれたという法務省文書だ。

 国会で過去3度廃案となった組織犯罪処罰法改正案は、共謀罪の新設を柱とした従前の案に代え、その構成要件を厳格化した「テロ等準備罪」の創設を柱に4度目の提出が見込まれている。

 世論には、戦時を象徴する悪法として名高い治安維持法に通じる監視社会の到来を予感させる内容に、懸念の声が根強くある。「共謀罪と、どう違うのか」などと野党の追及は厳しく、その度に金田法相は答弁に窮している。

 揚げ句に出て来たのが「改正案は国会提出後に議論すべきだ」とする法務省文書だ。立法府への言論弾圧として野党は猛反発。与党内からも疑問の声が上がり慌てて撤回したが、行間からにじみ出るのは、提出さえすれば何とでもなるというおごりだ。

 特定秘密保護法も、憲法の制約で議論が分かれる集団的自衛権行使に道を開く安全保障関連法も、国論を二分したまま最後は強行採決された。与野党それぞれに「法案が出されるまでが大きなヤマ」と踏んでいるに違いない。

 法案は、原則的に犯罪が実行された「既遂」を処罰対象とする刑法の考え方を揺るがし、憲法が保障する表現の自由などに重大な影響を及ぼしかねない。それを法務に疎い大臣に任せる政府の姿勢は国会軽視、国民軽視と受け取られても仕方あるまい。

 昨年は大分県警が夏の参院選の公示直前、野党の支援団体が入る建物敷地に無断で入り隠しカメラを設置していた事実が判明。カメラには不特定多数の人が写っていた。実際の運用に関わって、政府が「あり得ない」という事態が既に起きている。

 政府は間近に迫る東京五輪を持ち出して法案の緊急性を訴える。しかし2001年の米中枢同時テロ直後の「緊急性」にせかされ、米議会が即決した「愛国者法」が、やがて一般市民の監視強化の後ろ盾となったのは苦い教訓だ。

 議論を法案提出後に押しやり、数を頼みに決着を図る姿勢が垣間見えては、それこそ議論の余地はない。断念するのが賢明ではないか。

(2017.2.14)

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