[7]安比塗 藤森 由美子さん(37) 安代町

漆の美しさ引き出す

 安代町は、古くから荒澤漆器の生産が盛んだった。一時途絶えたが、20年余り前に安比塗として復興し、今に伝えている。同町字寺志田の藤森由美子さんは、安比塗を支える職人の一人。同町が運営する漆器工房で、漆を塗り続けている。

 安比塗は、天然の塗料である漆の美しさを最大限に引き出す。工程は、木固めという作業から始まる。トチノキやカツラなどで作った木地に、木からかき取った状態の乳白色の生(き)漆を染み込ませ、乾いたらペーパーで研ぐ。

 下塗りを5、6回重ねる。生漆に熱を加えてかき混ぜ、水分を飛ばしてあめ色になった状態の素(す)黒(ぐろ)目(め)漆に、弁(べん)柄(がら)というレンガ色の顔料を加え、塗っては乾かす作業を繰り返す。

 最後に上塗りをする。ここは、高価な浄法寺町産の漆を使う。精製した素黒目漆のみを塗って仕上げたものを「溜(ため)」、素黒目漆に赤っぽい本(ほん)朱(しゅ)という顔料を加えて塗ったものを「本朱」という。漆黒と朱のコントラストが、特に対になると互いを引き立たせる。

 わんや皿などが出来上がるには2カ月ほどかかる。「手にしっかりとなじみ、見ているだけでも心が落ち着く。これが魅力」とわが子のようにいとおしむ。

 同町出身で、高校卒業後に同町が漆器職人養成のために開設する町漆器センターで2年間学んだ。父親が家具職人で「父が作ったたんすに漆を塗る手伝いをしたい」という気持ちだった。

 初めて扱う漆。かぶれて、目が腫れて開けられない。手の指も曲げられないほど腫れ上がる。つらかったが「みんなが経験すること」と、やめようとは思わなかった。

 センターでの研修で漆器の美しさに取りつかれた。修了後、センター内の部屋を借り、注文を受けて制作を続けた。1992年に結婚、翌年に出産し、現場を離れて育児に専念した。

 99年、町漆器工房の開設に合わせて復帰した。漆を塗るためのはけを久しぶりに持ったときは「またやれるという喜び」で涙が出た。

 荒澤漆器からの長い伝統をつなぐ安比塗。「後世に残していかなければならない技で、自分が携わっていることに誇りを感じている」。小学6年と4年の2人の娘の母親は今、自分が作った漆器を子どもたちが大切に使ってくれることも励みにしている。

【写真=安比塗を守り伝える藤森由美子さん。「使うほどにつやが深みを増す」と魅力を語る】

【写真=藤森さんが制作に携わった漆器】

(2005年6月30日)


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