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一生と謎の生態
2017年11月21日

 本州一の水揚げ量を誇る本県の基幹魚種でもある秋サケ。日本人にとってなじみの深い魚だが、その種類や特性など一般に知られていないことも多く、研究者でさえその生態を全て解明できているわけではない。1万キロ(地球4分の1周)もの長旅の末に古里に帰る、生態系のサイクルの中心に位置しているサケ。その一生を追いながら、謎を学ぼう。

全身をくねらせて尾びれで川底を掘り、産卵床をつくるサケ。傷だらけになりながら新しい命を産み落とす=陸前高田市矢作町・矢作川(潜水、水中カメラで撮影)

 2度の回帰減で不漁傾向 本県

  本県のサケ資源は、稚魚放流数の増加に伴い漁獲量も増加を続けてきた。1984年度には放流数4億匹を突破し、東日本大震災まで続いた。震災のほか台風10号災害によってふ化場が被災したことで、近年は4億匹を割り込む年も出ている。

 漁獲量は96年度に7万3526トンのピークを迎えたが、3年後の99年度には2万3764トンに急落。2010年度には1万9011トンと30年ぶりに2万トン割れとなった。この2度の大幅下落と震災の影響によって、本県の不漁傾向が決定的となり、昨年度は8746トンに下落。北海道の太平洋側も同様に10年度から不漁傾向となっている。

 漁獲金額は、80年代半ば以降に200億円前後を付け、92年度に241億円と過去最高を記録。しかし、漁獲量ピークの96年度は供給過剰の影響もあり、107億円にとどまった。震災後は漁獲量の減少で単価も上昇したが、50億円前後で推移している。

 太平洋で7種類漁獲 淡水魚が進化か

 家庭の食卓で親しまれ、日本を代表する大衆魚のサケ。一般的に「さけ」と呼ばれるこの魚だが、三陸沿岸の定置網などで漁獲される秋サケ(標準和名サケ、通称シロザケ)のほかにも数多くの種類がある。

 主に三陸岩手に来遊するのはシロザケのほかサクラマス、カラフトマスの3種類。このほか環太平洋ではベニザケ、ギンザケ、マスノスケ、ニジマスが漁獲されている。この7種類を称して「サケ属魚類」と呼ばれている。

 生活域はいろいろなタイプに分類され、生活の一時期を海で暮らすものと、一生を川で生活するものがある。サケ・マスの仲間は元々は淡水魚だったが、氷河期に餌が豊富な海を求めて海に行く特性を強めたと考えられ、イワナ型→ニジマス型→サケ型の順に進化したといわれている。

 川で生まれたサケは、海にくだり沿岸から沖合に移動。その後、オホーツク海から、ベーリング海とアラスカ湾など北太平洋を回遊し、3〜5年かけて産卵のために古里の川へ戻ってくる。

 ただ、沿岸部の河川に遡上(そじょう)する多くは河口に設置された網で人工採卵用として捕獲さる。上流で自然産卵できるサケは、台風で網を撤去した際に上ってきたものなどごく一部。三陸産のサケの大半は「人工ふ化放流」という人の手によって採卵、ふ化、放流されたものであるといわれている。

 一方、内陸部の北上川などに遡上するサケにはふ化放流魚もいるが、自然産卵によって生まれたものも多いとみられている。

 生まれ育った川を目指して帰ってくるサケの本能を利用して拡大させてきた増殖事業。だがそこに今、異変が起きている。


 秋サケ(シロザケ) 日本沿岸に来遊するサケ・マスの大部分を占める人工ふ化放流の主力魚種。シロザケ、アキアジなどとも呼ばれる。写真は雄(上)と雌  サクラマス 本県にも分布し、ママスとも呼ばれる。一生を川で過ごすものをヤマメと呼ぶのに対し、海に出て川に回帰する。秋サケより高価で一部で増殖も行われている

 カラフトマス 日本では三陸のほか北海道のオホーツク海などに来遊。他魚種と異なり2年で回帰する  ベニザケ 主に北米産で日本でも人気のある高級魚。成熟した魚体が鮮やかな紅色になるのが特徴

 ギンザケ 日本沿岸ではほぼ水揚げされないが、国内で養殖が確立され、チリなど世界中で養殖されている  マスノスケ キングサーモンとして有名。米国やカナダが産地でサケの仲間でも最大級。三陸にもまれに来遊するが味も価格も「王様」級だ

 ニジマス 北米が原産地とされ、国内でも養殖が盛んに行われている。養殖魚はサーモントラウトなどと呼ばれ回転ずしで人気

 海の栄養 陸に運ぶ 本県回帰1%前後

 北太平洋の荒波にもまれ、たくましく育ったサケは今まさに、古里の川に成長した姿を見せている。食物連鎖には多くの生き物が関わり、海の栄養エネルギーを陸に運搬する重要な役目を果たしている。

 晩秋。川底の砂利に産卵された卵はヤマメやウグイの川魚に狙われながら、ふ化の時を待つ。2カ月後。ふ化したばかりの仔魚(しぎょ)は、自分で餌を取れるまで砂利に身を潜め、おなかの栄養で育つ。

 体重0・4グラム、体長4センチ程度の稚魚に育つと泳ぎ始めるようになる。主にカゲロウやカワゲラといった口の大きさに合う小型の水生昆虫が主食だ。

 サケの稚魚が海に行く際(降海(こうかい))は「スモルト」と呼ばれる銀白色の形態に変化し、海水に適応する。成長期に餌の豊富な海洋で過ごし、成熟期には取り込んだエネルギーを卵に回す生態は、進化の進んだシロザケやカラフトマスのサケ属魚類に見られる。

 小魚やイカを食べながら、ベーリング海とアラスカ湾を回遊して成長する間も大型魚類やサメ、イルカ、トドなどの海獣類に狙われる。放流した稚魚が成長し本県の海に帰ってくる回帰率は1%前後。厳しい生存競争が絶えることはない。

 4〜5年後。2千倍の重さに成長し、古里の川に帰ってきたサケ。ヒグマの鋭い爪を避け、水温変化の少ない湧き水の豊富な場所に1匹が約2500粒の卵を生む。力尽きたサケはタヌキやキツネ、カラスによって捕食され、秋から冬にかけての餌となる。

 サケの魚体には海から接種した栄養素やミネラルが含まれている。分解された死骸はプランクトンや水生昆虫、さらには川魚にも取り込まれ、最終的に海の栄養が陸にもたらされる。命をつなぐサケの一生。連綿と続き、多くの恵みをもたらしている。



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