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第1部 異変 D北海道ルポ

不漁の波、最北を直撃
2017年11月21日

 次々に水揚げされた秋サケが雄雌、傷の有無など6段階の等級ごとに手早く選別されていった。オホーツク海に臨む全国トップの水揚げを誇る北海道斜里町(しゃりちょう)の斜里漁港。しけ続きで5日ぶりの漁とあって、浜は活気に満ちていた。

 地元の斜里第一漁協は、取扱量の9割以上を「サケ定置」が占め、昨年は不漁とはいえ約9千トンと全道の10%。それだけで本県の総水揚げ量を上回る規模だ。

次々に水揚げされ、等級ごとに仕分けされる秋サケ。歴史的不漁が国内最大の産地を直撃している=北海道斜里町・斜里漁港

 だが、同漁協定置部会長の馬場浩一さん(62)は「久しぶりに網を揚げたのに全然駄目。量は少ないし銀ピカもいない」と表情は渋い。「銀ピカ」とは脂の乗りの良さから高値で取引される銀毛のサケ。「大銀鱗(だいぎんりん)」の名で売り出す同漁協のブランドだ。

 道東や本州の太平洋側が2010年から不漁傾向となっても、好調が続いていた大産地のオホーツク地方。「太平洋の話でこっちは大丈夫だと思っていた」。だが異変が現れたのは14年。突然、前年より30%下落し、昨年の21%減で不漁が決定的に。今年は10日時点で27%減とさらに悪い。

 「不漁のエリアが北上しているようだ」。馬場さんは深刻な表情を浮かべた。異変も肌で感じている。数年前から急にブリが取れ始め、流氷で有名なこの地方でも近年は接岸が遅く、去るのが早くなった。

 不漁は北上しているのか? 国内のサケ研究の拠点となっている北海道区水産研究所(札幌市)の斎藤寿彦・資源評価グループ長は「三陸と北海道の不漁が連動しているのは確かだ」とする。共通するのは稚魚放流後の6月ごろの海水温の急上昇。稚魚段階の成育悪化が回帰率に影響している可能性があるという。

 世界的にも米国が不漁の一方で際立つロシアの好漁。「地球温暖化や十数年周期の気候変動などが絡み合った海洋環境の変化で、サケに好適な状況が南から北にシフトしているのかもしれない」と懸念する。

 オホーツクの町は今、秋サケの不漁が水産加工会社の倒産を引き起こすなど激震が走っている。そしてその波は極端な品薄と高値という形で、全国の経済や食卓を襲おうとしている。だが、生まれてから回帰までに4年はかかるサケ。増殖事業の狂ったサイクルを元に戻すのは容易ではない。

 同漁協の大川原忠士専務は「資源回復までに20年はかかる」と語る。「これだけ日本の漁獲量が減少すれば国益の損失だ。各国と話し合い、国の責任として資源調査と原因究明をしっかりやるべきだ」

 三陸から始まったサケの異変が、最大産地の北海道に及び全国を揺るがそうとしている。

(第1部終わり)



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