新聞購読のご案内広告料金携帯サイト    
トップ スポーツ 経 済 暮らし・文化 世界遺産 選 挙 啄木・賢治 防 災 企画・特集 お買い物
訃報     風土計[コラム]     論説     社告     電子号外   
 Web サイト内

第1部 異変 B小型・高齢化

北洋で激しい競合か
2017年11月19日

 震災前の10分の1という極端に少ない秋サケの遡上(そじょう)数に苦しむ釜石市唐丹(とうに)町の片岸川。唐丹町漁協の作業場では、県水産技術センターと北里大海洋生命科学部(相模原市)による合同の個体調査が行われていた。

 同大は、東日本大震災で三陸キャンパス(大船渡市三陸町越喜来(おきらい))を離れて以降も毎年調査を続けている。手際よく体長や重量を測る林崎健一准教授(水産資源学)は手を止めると、こうつぶやいた。

片岸川に回帰したサケの体長や重量などの調査を行う北里大の林崎健一准教授(右から2人目)と井田斉名誉教授(左)ら=釜石市唐丹町

 「高齢の5歳魚が多いようだ。若い3歳魚は痩せている感じ。小さいね」

 近年、漁獲量が減少を続ける秋サケだが、「小型・高齢化」という魚体そのものの異変を示す気になるデータがある。

 林崎准教授が片岸川で行っている調査では、回帰の主力となる4歳魚(雄)で2001年に3・95キロだった体重が徐々に減少。震災後わずかに増加したが再び減少に転じ、昨年は2・91キロまで下落した。一方、平均年齢は4・05歳から4・35歳に上昇を続けている。

 これを裏付けるように県がまとめた今季の漁獲速報でも、平均体重は2・89キロ。震災前は3キロ台が大半だっただけに、小型化が漁獲量の減少の一因にもなっている。

 もっとも、小型・高齢化は、秋サケの漁獲量が急拡大した1980年代にも指摘された。要因は回遊域である北洋の過密状態。餌不足やストレスが、成長や成熟を遅らせているとみられていた。漁獲量が激減する近年とはまるで違う時代。にもかかわらず、再び小型・高齢化の傾向が出始めている。

 「数が少ないのに成長が悪いなんて理論的にはあり得ない」。調査を終えた林崎准教授も首をかしげる。そしてこう付け加えた。「北洋で何か大きな海洋環境の変動が起きている可能性がある」

 日本のほかロシア、米国、カナダなど世界各国のサケが集まり回遊している北太平洋。そこで注目されているのが、近年好調なロシアのサケ漁だ。

 調査に同行した同学部の井田斉名誉教授(魚類生態学)は「サケ同士の競合で、日本のサケの成育環境が劣化し、小型・高齢化に加え、生き残りの低下を招いているのではないか」と推測する。長年三陸のサケを見続け、80年代の小型・高齢化の傾向をいち早く指摘した人物だ。

 ロシアのサケに「負けている」ということか? あくまで仮説だが、それを証明しようと退職後も三陸に通い続けている。

 細る魚体。データが示すその現実が、疑問と懸念を大きくする。



[PR]

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます。
岩手日報社 Copyright(c)2017, IWATE NIPPO CO.,LTD. All rights reserved