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第1部 異変 @海がおかしい

三陸なのに、南の魚…
2017年11月17日

 午前4時。漁船のライトが夜明け前の海を一斉に照らした。「ウォーイ」。鈍いエンジン音をかき消すような男たちの威勢のいい掛け声。本番を迎えた秋サケ漁の始まりだ。

 親潮と黒潮がぶつかり、世界三大漁場に数えられる三陸の真ん中に位置する宮古市。宮古港から約4キロの「三丁目漁場」では、宮古漁協の定置網漁船第8三丁目丸(19トン)が、水深30〜40メートルに設置された網を起こしている。

宮古港口の漁場で網起こしを行う宮古漁協の定置網乗組員。サケに加えて南方系のブリの水揚げも目立った=6日午前5時10分、宮古市

 11月に入り、冷え込みは一段と厳しくなった。僚船が徐々に間隔を詰める。魚体が海面をはね、水しぶきが上がる。「よしきた」。胸が高鳴る瞬間。たも網で豪快にすくい上げ、甲板上に放り込んだ。

 だが、目に飛び込んできたのは、激しく跳ねる30センチほどの青魚。南方系の魚で「汐子(しょっこ)」と呼ばれるブリの1キロ未満の幼魚だ。「この時季にこれじゃあ何とも言えんなあ」。漁を統括する大謀の佐々木信幸さん(42)はこうつぶやき、天を仰いだ。

 宮古湾は、江戸時代からサケの上る川として名高い津軽石川を擁する「南部鼻曲がり鮭(ざけ)」の本場として知られ、本県屈指の水揚げ量を誇る。だが、東日本大震災を境に漁獲量は一気に減少。しかも、冷たい水を好むサケとは対照的に、ブリが増える傾向にある。

 宮古漁協の定置網と河川の水揚げ(10日現在)は約127トンと、震災前5年平均(2006〜10年度)の約70%減。一方、ブリは汐子を中心に759トン(同日現在)と、前年同期の3倍強。サケが回帰を始める10月以降も漁獲の中心を占めている。

 隣接する重茂(おもえ)漁協の根滝(ねたき)・秋舘ケ崎(あきたてがさき)統合漁場定置網の大謀、馬場康美さん(56)も「こんなまとまって汐子が取れるなんてこれまでなかった。南の魚が入るようになって、海が変わってしまった」と感じる。

 佐々木さんの漁船はこの日、隣の「秋二丁目漁場」の網も起こしたが、漁は1時間ほどで終了。結局、約1・8トンのサケに対し、汐子は2・8トンに上った。1990年代の最盛期には一度の網起こしでサケが15トンは水揚げされ、1日2回の漁も珍しくなかった。地域に多くの恩恵をもたらした浜の活力。それが今、危機にひんしている。

 「勝負はこれからだ」。自らに、そして従える乗組員に言い聞かせるように声を張り上げた佐々木さん。その鋭い目は遠く沖の方向を見つめていた。

 本県、秋サケ漁獲低迷 今月10日時点 震災前比62%減

 本県主力である本年度の秋サケ漁獲量(県速報)は10日現在、海と河川を合わせて2600トンと、記録的な不漁だった前年同期比で17%増とわずかに上回る一方、震災前平均(2006〜10年度)からは62%減と大きく落ち込む。11月の最盛期を迎えて伸び悩みが顕著になっており、関係者は危機感を募らせている。

 10日現在の漁獲量は、主力となる定置網などの沿岸漁獲2277トン(前年同期比13%増)、採卵用の河川捕獲271トン(同70%増)。魚市場別では、過去2年漁獲が低迷していた山田(同65%増)や釜石(同30%増)、大船渡(同36%増)など南部が回復する一方、主力の宮古(同8%増)や洋野町の八木(同28%減)など北部で苦戦。不漁の影響で金額は24億円(同51%増)と高値で推移する。

 前年より漁獲が増えたのは、サケが好む冷たい親潮が三陸沖まで南下していることが影響しているとみられる。ただ、震災の影響で漁獲が低迷した過去5年平均(12〜16年度)と比べても全体で29%減。被災した定置網やふ化場が復旧し、震災前に迫る水準まで稚魚放流数が回復したにもかかわらず、不漁傾向に歯止めがかかっていない。

 本県の秋サケ漁獲量は、1996年度の7万3526トンをピークに減少を続け、昨年度は8746トンまで落ち込んだ。一方、近年は主産地の北海道も不漁に見舞われ、漁が終盤を迎えた本年度は記録的不漁だった昨年度の34%減(10月末現在)となっている。海水温の上昇など海洋環境の変化が漁獲の減少につながっているとも指摘されている。



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