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特集 国会議員アンケート

過剰反応が足かせに

 津久井弁護士インタビュー

2017年6月21日

 保護規制が強化された改正個人情報保護法が先月全面施行され、安否情報などの「匿名化」の拡大が懸念されている。災害時の法制度に詳しい津久井進弁護士(兵庫県弁護士会)に解決策を聞いた。

 改正法が全面施行され、個人情報保護への過剰反応の第2波をひしひしと感じる。災害時の関心は家族や知人の安否に集中するが、萎縮を招き、行政が保有する行方不明者らの情報がせき止められている。

 1995年の阪神大震災では安否情報は何の支障もなく知ることができたが、個人情報保護法が施行された直後の2005年4月のJR福知山線(兵庫県尼崎市)の脱線事故では、一部の病院が「個人情報だから言えない」とシャットアウトしたため、いくつもの病院をさまよい歩いた家族も少なくない。ある意味、過剰反応のピークで公表の足かせとなった。

 今も行方不明者の氏名非公表が続いているが、正しい法解釈をすれば、公表できるのは当たり前。災害時に本人同意は関係なく、命を救うことに専心すべきだ。行政も当然、分かっていると思うが、公表によって寄せられる一定数のクレームを懸念している。

 だが、行方不明である限り、緊急事態は続いていると考えられ、少なくとも生存の可能性が高い発生から72時間以内は、個人情報保護は解除していい。

 守らなくてはいけない情報と単なる名前や住所の事実を示した情報が混同され、少しでも公表されたら、「漏えいだ」と苦情を言う市民にも反省すべき点がある。災害対策を後退させていることに気付くべきだ。

 法律は駄目押しをするには効き目があって、個人情報保護法が「情報を外に出してはいけない」という強い規制力を持ってしまった。子どもたちの連絡網、同窓会の名簿一つ取っても、市民生活の奥深い部分まで一気に浸透し、情報の流通をせき止めている。

 これはコミュニケーション自体を阻害したとも言える。人と人は顔と名前が一致して、初めて知り合いになり、仲良くなれる。性悪説の世界に立つから「知らない人に住所と氏名を知られたら悪徳商法に引っかかる」などという考えも出ると思うが、災害が起きた時は性善説で助け合わなくてはならない。

 国会議員アンケートについて、安否情報の問題意識が明らかとなった。公表についての一定の解釈指針として、マニュアルやガイドラインを国が示すことは十分にできる。ただ、災害は規模や状況によって異なり、法的拘束力を持たせると、細かい所まで立ち入れなくなり、結果として使えなくなる。現場で弾力的に取り組むということに尽きるのではないか。

 阪神大震災で家屋が倒壊した時、寝ている場所が分かっていて、命を救ったケースがあった。現在は高層住宅などが増えることによる孤立化、個別化、密室化が進む。目の前にいる人が災害に遭った時、つながり合うための情報が希薄化しているのではないか。

 情報を共有しにくくしている社会の仕組みは、災害対策の切り口では後退していると言える。改正法が全面施行されたが、過剰反応の沈静化が求められる。法の本来の趣旨は個人情報ではなく、個人の利益を守るためにあることを自覚し、市民の側も覚醒してもらうことが大事だ。

(談)

【写真=「市民生活の奥深い部分まで情報の流通をせき止め、災害対策に支障を来している」と個人情報保護法の弊害を指摘する津久井進弁護士=兵庫県西宮市の事務所】



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