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第4部 実名の価値・特集

「原則公表」社会的合意に

 鈴木正朝氏(新潟大法学部教授北上市出身)

2017年4月14日

 大規模災害時の行方不明者の公表基準が整っていない状況が明らかになった47都道府県の調査。個人情報保護法制に詳しい新潟大法学部の鈴木正朝教授=北上市出身=が結果を基に、国による公表基準作りを提言した。

 東日本大震災から6年が経過し、本来であれば公表基準を明確化していてしかるべきだ。行方不明者の公表可否についての回答で「ケース・バイ・ケースで判断する」とあったが、お役所言葉でしかなく、行政として根拠を考えていないとも言える。

 憲法21条は表現の自由を保障しており、その一環として報道が行われる。どんな組織もそうだが、迷った時は非公表とすればリスクを負わない。行政も根拠を精査せず「個人情報だから駄目」と言えば、メディアは黙る傾向がある。

 住民も平時の感覚で、少しでも情報が漏れるとクレーマーとなってしまう。みんな萎縮傾向にある。だが、個人情報保護条例と対比すれば、憲法を根拠にした表現の自由、いわばメディアの権利が優先されるだろう。

 災害時の行方不明者は、本人に落ち度はなくても公共的な扶助を受け、影響を与える存在となってしまう。その時に個人情報は保護すべきものではなく、適正に利用するものという事実を甘受し、公共的問題として氏名は原則公表されるという社会的コンセンサス(合意)をつくっていく必要がある。

 そもそも報道は歴史的資料になり、事後に行政が時系列的に住民の被害状況を正確に把握していたかを検証できる。後手に回り、災害対応が不十分な自治体もあるだろう。行政は基本的な個人情報(住所・氏名・年齢・性別)を公表し、実名を報道するか否かは報道各社が判断し、その責任や住民からのクレームは各社が負うべきだ。

 それはメディアの信頼の論点とも関わる。イエロージャーナリズム(扇情的な報道)になれば、世論は公表しない方向に傾く。大規模災害時の安否情報にメディアが果たす役割は大きく、メディアスクラム(集団的過熱取材)を避け、公共的な役割を果たしているという信頼が基礎にあれば、行政としても公表をためらう必要はない。

 行方不明者の公表について、8割の自治体が国のガイドライン(指針)を求めていることは興味深い。「個人情報保護法制2千個問題」という言葉がある。全国には都道府県と市区町村、広域連合などを合わせて2千を超える個人情報保護条例があり、地方議会が制定し、首長が運用するため判断がばらつく要因になっている。

 行政のみで広域災害に対応できないことは震災で分かったはずだ。行方不明者の個人情報などを一律に取り扱うためにも個人情報の公表基準の整備は急務。被災地からルール作りを国に働き掛け、国は新規立法し、基準の国内統一を図るべきだ。

 (談)

【写真=行方不明者の氏名公表について「いつまでもケース・バイ・ケースで判断してはならない」と指摘する鈴木正朝教授=東京都内】



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