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第3部 見過ごされる名前・特集

事前の合意形成が鍵

 中森広道教授(日本大文理学部社会学科)

2017年3月7日

 行方不明者の氏名公表はどのように考えるべきか。災害時の情報・報道に詳しい日本大文理学部社会学科の中森広道教授がアンケート結果を読み解いた。

 時代は個人情報の公表にシビアになっている。大規模災害時であっても行方不明者の氏名公表の賛否は分かれるが、被災者は自ら情報発信できる状況になく、捜索活動や安否確認のため氏名は公表した方がいい。そのために行政と住民による具体的なルール作りが必要と考える。

 その中で「行方不明者の氏名公表」について「原則非公表」が1・6%にとどまった。「家族の判断に任せるべき」も含めて、90・2%は「公表してもいい」と見ることができる。

 これは、災害時に個々の家族に確認を取ることを求めているのではなく、「黙って公表しないでほしい」という意味合いが強い。言い換えれば、事前に住民との合意形成が重要になるとも言えるだろう。

 行政は大規模災害が発生した段階から人数だけではなく「誰がいなくなったか」という情報を集め、公表の準備をしなくてはならない。現在はケース・バイ・ケースで公表の判断を行っているが、手間がかかっても事前に災害時の行方不明者公表の考えを示していれば、理解を得られるし、反対意見も聞き、対策を取れるのではないか。

 行方不明者家族に震災当時の公表の判断を聞いた設問では、「公表してほしかった」が過半数を占めた。いくつかの意味合いがあるが、行方不明になった家族の「証し」を知ってもらいたいという思いがあったし、「家族が駆け付けて助けることができた」と考える人もいる。個々のケースには理屈を超えたさまざまな思いがある。

 避難者名簿による安否情報についても指摘したい。震災当時、全国からのメディアは「お気の毒」「かわいそう」という視点で報道する傾向があったが、被災者は生活情報や安否情報を何よりも求めている。地元の新聞やテレビ・ラジオが早い段階で対応した結果、7割超が「役に立った」という判断をした。

 新聞は災害時に強いメディアだ。被災直後はテレビやラジオの情報が早いが、避難生活に入ると新聞の評価が高まる。私自身も被災当時の大槌高で避難者名簿や安否確認の張り紙が壁一面にある状況を見たが、その断片的な情報を整理して、俯瞰(ふかん)した情報を提供できる。テレビやラジオは視聴の偶然性にも左右されるが、新聞は保存・確認が容易だ。活字なので伝言による間違いもない。

 東日本大震災から6年が経過する中、安否の公表に限っても、遺族がこれだけの意見を持っていることが示された。首都直下地震や南海トラフ巨大地震が想定される中、全国の自治体が命を守る防災対策に加え、被災後の安否情報の在り方について考えることが望ましい。

 (談)

【写真=「行方不明者の安否情報に関して、さまざまな課題が浮き彫りになった」とアンケート結果を分析する中森広道教授=東京都世田谷区・日大文理学部】



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