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第1部 安否を伝える・特集

公表判断は報道機関

 園田 寿氏(甲南大法科大学院教授)

2017年1月8日

 災害時の個人情報の在り方を考える上で、情報は公開されることが原則であると強調したい。憲法21条で表現の自由が保障されており、情報の自由な流通が日本社会や民主主義を支えている。国や地方自治体が行った意思決定や行動を国民が事後的に検証するためにも欠かせない。

 個人情報には私的な価値と公的な価値の二面性がある。私的な価値は個人の利益や秘密などのプライバシー、公的な価値は個人情報を収集した他者が意思決定する部分が当たる。特に行政は、個人情報を基に各種施策を立案し実行しており、バランスを取っていくことが課題となる。

 近年の災害の事例を見ると、行方不明者の個人情報の非公表が問題となったが、原則は公表されるべきだ。特に大規模災害は、行政や関係機関は安否情報に基づいて、次々と対策を打たなくてはならず、公的な利益が個人のプライバシーより優先される。

 行方不明の場合は、名前を公表することによって発見が早まることも考えられる。各自治体の個人情報保護条例の中で、個人の生命・身体・財産を保護するため、緊急的な場合は個人情報を公表できるともあり、家族の同意を最優先するという一般原則は当てはまらないだろう。

 最終的には、行政の判断で公表・非公表を決められていいのかという問題に行き着く。行政が集めた情報は広く共有されるべきで、災害時に名前を隠すことが、個人情報のどの部分を守ることになるのだろうか。報道機関が公表された情報を適切に取捨選択して、どこまでオープンにするべきかを含めて、判断する方がいい。

 行政側に個人情報保護に対する過剰反応も見られる。ニュースで個人情報の漏えいが伝えられることも多く、現場が守りの姿勢に入ってしまうことも分からなくはないが、民間に波及して、PTAの連絡網が作れないなどといった弊害も起きている。

 一方で、報道機関も取材の在り方を検証すべきだ。センセーショナルな報道をする方が、部数や視聴率が伸びる面もあるだろうが、事件報道でゴシップ紙が被害者のプライバシーに過度に踏み込んでいる例も散見される。災害時においても被災者の悲しみに共感し、なぜこれほどの被害になったかを考える伝え方が望ましい。

 報道機関は、表現の自由を実現する担い手として社会的責務が大きい。行政や警察から情報提供を受けて、適切なフィルターをかけた上で国民に知らせる。その基準となるものは国民の検証可能性に尽きる。決して好奇心を満足させるためではないことを自覚してもらいたい。

 (談)

【写真=「行政の意思決定を検証するためにも情報は公開が原則」と説く甲南大法科大学院の園田寿教授=神戸市・甲南大】



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