新聞購読のご案内広告料金携帯サイト    
トップ スポーツ 経 済 暮らし・文化 世界遺産 選 挙 啄木・賢治 防 災 企画・特集 お買い物
訃報     風土計[コラム]     論説     社告     電子号外   
 Web サイト内

第1部 安否を伝える・特集

保護法制の理解不足

 岡本 正氏(弁護士)

2017年1月8日

 災害時、安否確認は生死を分ける。行方不明者をどのように捉えるか、統一を図らなければいけない。安否確認をする主体がいくつかある中で、安否情報をリアルタイムで共有できているかが課題だ。

 その上で公表したほうが捜索が進んだり、情報が寄せられるというのであれば、早い段階で判断すればよい。県や市町村、警察、消防など関係機関が情報共有できる体制があるのか検証が必要だろう。

 大きな災害が発生するたびに個人情報を巡る問題が発生している。2015年9月の関東・東北豪雨や、14年8月の広島市の土砂災害は記憶に新しい。その混乱の背景にあるのは、個人情報保護法制への理解不足ではないか。

 住民の個人情報は自治体ごとの「個人情報保護条例」が規律している。同条例には、人の生命・身体・財産を守るために緊急かつやむを得ないときには、本人の同意等がなくても自治体保有の個人情報を提供、開示できるという規定がある。

 巨大災害が発生したとき、住民の安否確認を優先した個人情報の開示に踏み切ることは「やむを得ない」といえる典型的な場面だ。

 では何が緊急性か。緊急事態になってからどうするかでは遅すぎる。起こり得る危機を想定したルール、基準作りが必要だ。最低限のルールを作ることで現場の判断を助ける。運用が硬直的にならないかとの声を聞くこともあるが、基準があってこそ最低限が担保され、応用が利く。

 東日本大震災を経て、改正された災害対策基本法で、安否情報が法制度化され、自治体は被災者の安否に関する情報照会に回答できると明記された。

 個人情報の法制への理解不足が誤解を招き、過度に慎重な姿勢をつくってしまっている。自治体の災害対策として急務なのは、個人情報保護法制の理解を促進する研修、災害時を想定した安否情報開示のための判断基準の策定、それを使いこなす思考訓練だ。

 近代社会における「匿名化」は災害時に顕著に影響する場面がある。例えば、分譲マンションは居住者把握が完璧にできないという課題がある。誰がいるのか、誰がいないのかも分からない。分譲は災害時に危険な箱になってはいけない。命綱として、全員ではないが自治体が作成する避難行動要支援者名簿も活用すべきだ。

 名簿に関しては受け手がいるかが一番の問題だろう。育成が必要だ。平常時から守秘義務を課して渡して、見守り活動からやってもらう。共有先をつくるためにも、受け取る側への個人情報に関する教育も大切になる。

 (談)

【写真=「個人情報保護法制への理解不足が過度に慎重な姿勢をつくっている」と指摘し、研修や思考訓練の必要性を訴える岡本正弁護士=東京都内】



[PR]

 岩手のニュース


本ページ掲載内容の無断転載を禁じます。
岩手日報社 Copyright(c)2017, IWATE NIPPO CO.,LTD. All rights reserved