新聞購読のご案内広告料金携帯サイト    
トップ スポーツ 経 済 暮らし・文化 世界遺産 選 挙 啄木・賢治 防 災 企画・特集 お買い物
訃報     風土計[コラム]     論説     社告     電子号外   
 Web サイト内

第1部 安否を伝える・特集

不明者捜索を最優先

 伊豆大島土砂災害(2013年)東京・大島町−公表

2017年1月8日

 全国各地で頻発する大規模災害。発災当初の関心は安否情報に集中するが、行方不明者の氏名が非公表となるケースが相次いでいる。2013年の伊豆大島土砂災害、15年の関東・東北豪雨では、氏名の「公表」「非公表」の判断が分かれた。個人情報保護法の施行や市民のプライバシー意識の高まりの中、あなたの存在を証明する名前はどのように扱われるべきか。各地の事例を紹介し、災害時の個人情報の扱いや取材の在り方について3人の識者に聞いた。

 2013年に台風による土石流災害が襲った東京都大島町(伊豆大島)は、発災直後に行方不明者の氏名を役場庁舎内に張り出した。当時の町長、川島理史(まさふみ)さん(64)=同町岡田、民宿経営=は「実名を公表することで住民から情報が集まる。人命最優先で効果的な捜索をするためには当然の判断だった」と振り返る。一方、町では個人情報の取り扱いの難しさから、不明者公表の在り方について模索を続けている。

 災害発生は同年10月16日未明。川島さんが県外出張から同日午後に役場に戻った時にはけが人搬送にめどが立ち、行方不明者の捜索に直面していた。

 「なんとか捜してくれ」。役場には懇願する家族の姿もあった。「個人情報保護法も頭にあったが、家族の思いを考えると、1時間でも早く不明者を捜すことを優先した」。家族への確認を行わないまま、その日のうちに実名公表を決断。職員からも異論はなかったという。

 「ちゅうちょない判断」の背景に三つの理由を挙げる。第一に、行方不明者を特定して効果的に捜索するため、地元住民に情報収集の協力を求める狙いがあった。警察や自衛隊などが一斉捜索する上で、地形や住まいの実情が分かる地元住民の情報が役立った。公表後、「俺は生きている」との連絡があった例もあり、結果的に情報の精査につながった。

 第二に、島には消防署がなく、普段から行方不明者の捜索や消火活動は島の消防団が担ってきた地域性。

 第三に、宿泊施設が被災し、予測していない人が巻き込まれた可能性もあった。経営者が大けがで搬送され、宿泊客の把握が困難な状況にあった。情報開示し、被災者を漏らさず把握する必要があった。

 ただ、大島のケースがすべてに当てはまるわけではない。当初の行方不明は約40人に上り、川島さんは「犠牲者が1、2人のときには公表しなかったかもしれない。大島は公表の効果が明確だったが、岩手や常総で通用するかは分からない」と被災規模や土地柄が影響したことを指摘する。

 町は犠牲者の死亡確認がされた時点で、遺族に氏名公表の可否を確認。県外に住む遺族が報道機関の取材を受けて非公表を求めた事例などがあり、後から資料を「黒ぬり」にする配慮をしている。

 町は現在、災害を受けて地域防災計画の見直しを行っているが、不明者公表については明確にしていない。町防災対策室の高橋義徳室長は「個人情報の取り扱いは難しい。他の自治体で公表しない理由があると思うので、その動きを見ながら判断したい」と話している。

【写真=土砂崩れ現場で不明者の捜索活動をする消防隊員ら。後方は大島町役場=2013年10月17日、東京都大島町】



[PR]

 岩手のニュース


本ページ掲載内容の無断転載を禁じます。
岩手日報社 Copyright(c)2017, IWATE NIPPO CO.,LTD. All rights reserved