新聞購読のご案内広告料金携帯サイト    
トップ スポーツ 経 済 暮らし・文化 世界遺産 選 挙 啄木・賢治 防 災 企画・特集 お買い物
訃報     風土計[コラム]     論説     社告     電子号外   
 Web サイト内

第6部 被災地からの提言

安否確認、共助の力で
2017年6月13日

 <山田町の祖父と母の安否が分からない>

 <岩手県人が避難しているであろう八戸市や気仙沼市も載せてほしい>

 岩手日報の紙面に東日本大震災の避難者名簿が掲載された2011年3月14日以降、盛岡市の本社に相次いだ電話。その多くが、家族や知人らの安否情報を求めていた。

 「離れて暮らす家族の安否を確認できないのが一番不安になる」

 釜石市鵜住居(うのすまい)町出身の県立大社会福祉学部2年前川美里さん(19)。大学入学を機に古里を離れて生活する今、震災で実感した安否確認の重要性をあらためて認識している。

 釜石東中1年時に震災に遭い、家族と連絡が取れない日々を過ごした。その経験から大槌高時代、玄関先に下げて周囲に避難状況を知らせるA4判の「安否札」を作成し、近所の住民に配布した。

 「災害時は一分一秒を争う。事前に避難場所などを決めておけば、互いの安否確認にもつながる」。安否札にあらかじめ避難場所を書き、家族のルール作りに活用する同市鵜住居町の歯科医師佐々木憲一郎さん(49)は強調する。

 安否札は家族で話し合うきっかけ−。現在、大学でボランティアサークルに所属し、復興支援活動に携わる前川さんは「(安否札を)名刺サイズにして常に持ち運べたらいいかもしれない。災害はどこでも起こる。事前の約束を共有する手段にもなる」と考えている。

 家庭や地域で自助、共助の在り方を見つめ、安否確認のルールを作ることは命を守ることにつながる。それは災害弱者の避難対策にも生きる。

 震災後、国は避難支援が必要な高齢者や障害者などの名簿作成を義務化したが、支援に携わる関係者間での名簿共有は、個人情報の壁や本人同意の問題で難航。先月、全面施行された改正個人情報保護法で本人の人種や病歴などを「要配慮個人情報」と位置付けたことも、情報共有を難しくする可能性がある。

 今後は実効性ある災害弱者の支援に向けて、本人同意の有無にかかわらず、要支援者名簿の事前提供を可能とする条例の制定や、「未同意者」の名簿を密封した状態で保管し、緊急時だけ開けるようにするなど情報管理の検討が重要になるだろう。

 防災と福祉をつないだ見守り体制づくりのワークショップを行う、県立大総合政策学部の倉原宗孝教授は「名簿を作っても情報共有ができていないなど、制度的な仕組みだけでは難しい面もある。プライバシーを保ちつつ、普段は柔らかな見守りの目があるコミュニティーを日常からどうつくるかが大切だ」と指摘する。

 災害時に助け合い、生き抜く。それは互いの存在を確認し、平時からのつながりや備えがあってこそだ。

 匿名化が拡大する社会にあって、名前や顔の見える関係の大切さをあらためて胸に刻みたい。

(第6部終わり)

【写真=ボランティアサークルの仲間と笑顔を見せる前川美里さん(左から2人目)。安否確認の重要性を再認識している=滝沢市巣子・県立大】



[PR]

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます。
岩手日報社 Copyright(c)2017, IWATE NIPPO CO.,LTD. All rights reserved