新聞購読のご案内広告料金携帯サイト    
トップ スポーツ 経 済 暮らし・文化 世界遺産 選 挙 啄木・賢治 防 災 企画・特集 お買い物
訃報     風土計[コラム]     論説     社告     電子号外   
 Web サイト内

第6部 被災地からの提言

丁寧な取材、信頼保つ
2017年6月11日

 「このままでは運営が立ち行かなくなる」

 東日本大震災で避難所となった陸前高田市の一中にはピーク時に1250人が避難。国内外のメディアの取材が殺到した。

 被災者にペンとカメラが容赦なく向けられる。「避難所に泊めてほしい」「遺児や孤児はいないか」。無理難題もふっかけられた。

 住民主体の避難所本部は発災から5日後の3月16日、報道対応を1日3回と決めた。開設以降の出来事も事細かに張り出し、問い合わせの負担軽減も図った。

 20日には▽避難スペースへの立ち入りと撮影▽避難所スタッフの担当業務を阻害する行為▽被災者に対しての配慮を欠いた行為−を禁止するガイドラインを掲示した。

 当時、運営に携わった釘子(くぎこ)明さん(58)は「伝えてもらうことは大事だが、報道に違和感を持った被災者もいたことは事実。未然にトラブルを回避する目的だった」と振り返る。

 行政が機能停止する中で、自らメディアスクラム(集団的過熱取材)の防止を図った住民たち。報道対応を担当した鵜浦(うのうら)昌也さん(55)は「『報道のおかげで支援が寄せられている』という『上から目線』を感じたこともあった。不信を募らせるような取材を繰り返していないだろうか」と問い掛ける。

 東日本大震災の被災地は広範囲に及び、取材が特定の場所や人に集中するケースは比較的少なかった。だが、釜石市の鵜住居(うのすまい)地区防災センターに避難した妻郁子さん=当時(63)=が犠牲となった三浦芳男さん(71)は「妻との話が正確に伝わらず記事化された。同じ人に集中する取材手法も続いている」と指摘する。

 本県のメディアは3月18日、22社で組織する報道責任者会議が節度を持った取材など5項目を申し合わせ、日本新聞協会や民放連に要請した。報道機関が信頼を保つため率先してルールを作った事例として、今後の災害でも同様に周知徹底する必要がある。

 法政大社会学部の藤代裕之准教授(ジャーナリズム論)は「課題を明らかにしたり、生きた証しを残したいという思いに応えるため、丁寧な取材が社会の評価につながる」と強調。

 その上で「ネットの発達により、過熱取材のマイナス面が強調され、逆に行政当局の匿名発表の口実にされている。信頼を得られるようにいま一度、取材姿勢を省みてほしい」と提言する。

 報道の公益性・公共性を根拠に安否情報を「公表すべきだ」と訴えるだけでは、社会の理解を得ることが難しい時代に入った。被災者の気持ちに配慮しながら、ルールを守った取材を肝に銘じたい。

【写真=陸前高田・一中の避難所に張り出された東日本大震災当時の報道機関向けの文書。災害のたびに繰り返される過剰な取材が住民の目を厳しくしている】

【写真堰$逅l以上が生活する一中の避難所。報道機関が殺到する中でこの日から取材のルール化が図られた=2011年3月16日】



[PR]

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます。
岩手日報社 Copyright(c)2017, IWATE NIPPO CO.,LTD. All rights reserved