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第6部 被災地からの提言

名簿開示は選択制に
2017年6月8日

 発生から間もなく6年3カ月となる東日本大震災。当時、沿岸被災地の避難所では避難者名簿が張り出され、新聞やラジオ、ホームページなどを通じて県内外に届けられた。

 「生存者情報」は原則公表すべき情報―。大規模広域災害も想定される中、その情報は広く発信するべきだ。だが、岩手日報社が県内33市町村を対象にしたアンケートでは、名簿の公表について、多くの自治体が配偶者からの暴力やストーカー行為の被害者など、配慮が必要な避難者への対応を課題に挙げている。

 「自分の安否が伝わるのが遅れたとしても、やはり名前が出ることは怖い」

 結婚後10年以上にわたり、夫からの暴力に苦しんだ県内の40代女性はこう苦しい胸の内を明かす。離婚が成立した今も、背格好が似ている人を見ると恐怖に襲われるという。支援団体の報告によると、東日本大震災では実際、避難所に捜しにきた夫に見つかってしまった事例があった。

 3月に避難所運営マニュアルを策定した大船渡市は、配慮が必要な被災者への対応も考慮し、避難者名簿の公表について明記した。

 避難者や在宅避難者の名簿には住所、氏名、性別、年齢の開示について同意、不同意を選択できる欄を設けた。震災時、多くの人が避難所を訪ねて名簿で家族らの安否を確認したことから、同意を得た場合は照会用名簿を作成。避難所に張り出し、公開する。

 「災害時でも自分の居場所を知られたくない人はいる。公表は同意を得た上での対応となる」。市防災管理室の森正主幹はこう強調した上で、「情報を公表しないと混乱しかねない。名簿を張り出すことで運営面からも迅速な対応につながる」と語る。

 40代女性は「災害時の混乱の中で、特別な事情を抱えていると説明し、対応してもらうのは申し訳ないと思う面もある。(公表の可否を)判断できるのはありがたい」と話す。

 首都直下地震や南海トラフ巨大地震では膨大な数の避難者が想定されている。避難所での張り出しやメディアへの情報提供など、安否情報を速やかに発信できる仕組みを事前に検討することが求められる。

 震災後から、県内でも女性支援に取り組む団体カリタス(東京都)の伊瀬聖子さん(52)は「個人が選択できる仕組みが徹底されれば、名簿は公表してよいと考える。要配慮者の対応を含め、今後の災害への備えとして議論が広がれば」と指摘する。

【写真=大船渡市避難所運営マニュアルの避難者名簿と照会用名簿の様式。氏名、住所などの情報開示の同意、不同意を確認した上で安否確認に対応する】



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