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第6部 被災地からの提言

生存 誰もが届け出を
2017年6月7日

 宮城県境に近い内陸部の一関市花泉町で3日に行われた土砂災害・全国防災訓練。花泉市民センターでは花泉地区として初めて避難所の開設・運営訓練も実施し、参加した住民たちが避難者の名簿作りに取り組んだ。

 「この名簿に氏名、住所を書いてもらいます」

 一関南消防署員の説明を受けた参加者は、同センター入り口の受付で、「避難者世帯名簿」の用紙にそれぞれ氏名などを記入した。

 訓練に参加した一関市花泉町の農業菅原妙子さん(60)は「避難者名簿は絶対に必要。情報が悪用される懸念よりも、災害時は家族や知人の居場所を確認したい」と強調する。

 そう考えるのは、東日本大震災の経験からだ。当時、仙台市にいる娘2人の安否が分からず、市内の避難所を捜し歩いた。頼りにしたのは避難者名簿の情報。名簿を見て、いないことを確認すると別の避難所に向かう。それを繰り返した。

 「名簿がなければ何の情報もなかった。訓練を通じて、みんなが名簿の必要性を共有すべきだと思う」

 避難者名簿は災害時に自身の生存を証明する「命の名簿」だ。交通、通信が途絶える中、それは最も重要な情報源となる。避難者は、避難所で名簿に氏名を必ず記入する。普段の避難訓練で、名簿作成に備えることも大切だ。

 花泉地区自主防災会の高橋隆会長(68)は訓練を振り返り、「初めて取り組み、課題も見つかった。避難所に誰がいるか把握することは運営面からも必要」と意義を実感していた。

 災害時は、やむを得ない理由で個人宅や車中で避難生活を送る被災者もいる。東日本大震災でも、県が在宅避難者の把握を進めた結果、全避難者数が8千人余り増加。情報や支援物資が届かない状況も生まれていた。

 震災後に改正された災害対策基本法では、避難所以外の場所に滞在する被災者への配慮が定められた。大槌町吉里吉里(きりきり)地区で避難所運営に携わった藤本俊明さん(67)は「震災時はどこに避難したかによって格差が生じてしまった。自分の無事を公的な避難所に伝えることも必要ではないか」と訴える。

 災害で助かった命を、避難生活で亡くすことがあってはならない。在宅避難者も近隣の避難所などで名簿に氏名を記入したり、届け出る意識を持つことが求められる。

 そして、名簿による「生存者情報」は、安否を知りたい多くの人々のために原則公表する。災害はいつ、どこで起こるか分からない。対応は全国で統一し、徹底するべきだ。

 大規模災害時の安否情報の在り方を考えてきた連載。震災や台風10号豪雨で安否情報の重要性を痛感した被災地のメディアとして、避難者や行方不明者の氏名は原則公表されるべき公共的な情報と確信している。保護規制が強化された改正個人情報保護法が先月、全面施行され、匿名社会のさらなる深刻化も指摘されている。最終の第6部は、今後起こり得る災害への備えとして、災害時の氏名公表の在り方を提言する。

【写真=避難者世帯名簿の用紙に氏名や住所を記入する訓練参加者。避難者名簿は災害時に生存を証明する命のメッセージとなる=一関市花泉町・花泉市民センター】



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