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第5部 氏名公表の壁 A国の反応

「状況に応じ」と慎重
2017年5月9日

 国の災害対策・防災行政の基本となる災害対策基本法(災対法)。死者・行方不明者が5千人を超えた1959年の伊勢湾台風を機に、各分野で乱立していた災害対策の法制度を一本化し、61年に制定された。

 この災対法に、発災時に住民が求める「安否情報の提供」が、義務ではなく任意の事務として盛り込まれたのは、東日本大震災後だった。

 ただ、これは照会があった場合に自治体が回答することができるという規定で、不明者の氏名公表を定めるものではない。

 「災害対応として最優先は人命。救助や捜索の観点から不明者の氏名公表が役立つということであれば、積極的に公表すべきだ」。内閣府の小松雅人・政策統括官(防災担当)付企画官(災害緊急事態対処担当)は考え方を説明する。

 だが、それを「判断するのは都道府県」(内閣府、消防庁)だ。関東・東北豪雨や広島土砂災害など近年の自然災害では、不明者氏名の「公表」「非公表」の対応が分かれている。

 岩手日報社が東京都、神戸市、高知県の3地区で行った住民調査で、災害時は「実名公表」を望む民意が圧倒的多数を占めた。一方、全国47都道府県調査では不明者の氏名公表について、明確な対応を決めていない自治体は35都道府県(74・5%)に上り、本県など37道府県(78・7%)が「国が指針を示すべき」と回答した。

 判断が難しいからこそ、公表に関する基準の明確化について国の積極的な姿勢が求められる。だが、現時点で「議論があるわけではない」(内閣府)。

 小松企画官は「災害は千差万別。規模や救助捜索の状況、家族への配慮、公にする弊害などを慎重に検討し、判断すべきだ」と語る。

 災害時に自治体から被害情報の報告を受ける消防庁の角田秀夫・応急対策室長は「安否情報は関心があるからこそ、いろんな段階の情報がある。災害の状況によっても違い、一律の文章で判断することがいいのか議論が必要」と言及する。

 災害時、国に報告が求められている人的被害の状況は死者・行方不明者の「数」。角田室長は「氏名は報告を求めることになっておらず、公表については、国は助言という形になる」。小松企画官も「国として過去の災害の経験などを伝え、必要な助言は行う」と述べるにとどめる。

 発生が懸念される首都直下地震や南海トラフ巨大地震は、膨大な数の避難者、犠牲者が想定されている。

 陸前高田市に事務所を構えるそらうみ法律事務所の瀧上明弁護士は「広域災害で自治体ごとに対応が異なることは混乱を招く原因になる。どういう目的で、誰に対して、どの情報を、どのように発信するか。国が枠組みを示して法律を定め、ルールを整理すべきだ」と指摘する。

 大災害が起こってからでは遅い。多くの自治体の要望、そして民意に応えるためにも、安否情報の公表に関する法整備の議論を始めるべきではないだろうか。

【写真=東京・霞が関と国会、震災時に手書きの行方不明者名簿が掲示された釜石市災害対策本部の建物のコラージュ。安否情報公表に向けた法整備の議論が求められる】

 



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