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第4部 実名の価値 Eコミュニティー構築

存在確認し合う力に
2017年4月13日

 2011年3月11日。仙台市若林区のマンション「シャンボール第2荒町」(1982年建築、127戸)の壁は200カ所以上がひび割れ、玄関ドアが開かなくなった約20戸の居室では、住民が避難することができずにいた。

 管理組合の理事らは、独自に作成していた要支援者名簿などを基に手分けして安否を確認。電気、水道が復旧するまでの4日間、備蓄非常食を活用して食事を確保し、「自助」と「共助」で命をつないだ。

 「住民同士がどうやって助け合っていくか。長年の防災活動の成果が、あの日の対応だった」。同マンション管理組合の米山護理事長(74)は振り返る。

 自主防災活動は04年にスタート。居住者の高齢化に伴い、08年からは災害時に支援が必要な高齢者や障害者らの把握と、近くの居住者が支援者となる組織づくりを始めた。

 当初は個人情報保護を指摘する意見もあった。だが、居住者のほとんどは65歳以上で対策は喫緊の課題。「強制的にやるのは難しい」。アンケートという形で調査を進めることにした。

 毎年8月に行うアンケートは昨年で9回を数えた。調査の継続や防災に関する広報発行などで調査への理解も深まり、防災意識の高まりも感じるという。

 「管理組合がプライバシーに踏み込み過ぎることはできない。住民が参加したくなる仕掛けが大切だ」。米山さんは力を込める。

 匿名性が高いマンションで、いかに防災活動を推進するか。東北で最も多い約1400棟の分譲マンションがある同市は、それを後押しするさまざまな施策を展開する。

 「杜(もり)の都 防災力向上マンション認定制度」もその一つ。建物本体の耐震性能や防災備蓄倉庫設置などのハード面、自主防災組織の結成や地域の防災訓練参加などのソフト面それぞれを三つ星で評価する仕組みで、シャンボール第2荒町は最高位の六つ星だ。

 市中心部の同市青葉区に立つ高層マンション「ザ・ライオンズ定禅寺(じょうぜんじ)タワー」(12年建築、192戸)は昨年3月、六つ星認定を受けた。入居開始直後から防災を課題とし、地元町内会との連携や要支援者対策の充実に取り組む。

 居住者は町内会に一括加入し、マンション敷地内に地元町内会の防災備蓄倉庫を設置。合同防災訓練の実施や地域の祭りへの参加を通じ、「地域の一員」として顔の見える関係を築く。

 要支援者は全戸配布の「居住者防災情報カード」で把握し、支援が必要と回答した居住者は個別面談を実施した。管理組合の理事長らがより細かい状況を聞き取り、16年度には要支援者本人が参加する避難訓練を初めて行った。

 「防災活動そのものがコミュニティーを形成する一番有効な手段だ」

 同マンション管理組合理事長で、地元町内会の副会長も務める熊谷祐一さん(64)は、こう実感している。

 自分の存在を証明し、互いの存在を確認し合うことができる。それが実名の力だ。そこから生まれる顔の見えるつながりが、災害時の自助、共助の最大の備えになることを再認識する必要がある。

(第4部終わり)

【写真堰%兼本大震災当時の状況を振り返る米山護理事長(右)と荒木謙吾副理事長。長年の防災活動の積み重ねが顔の見える関係づくりにつながっている=仙台市若林区】

【写真=要支援者本人が参加して行われたザ・ライオンズ定禅寺タワーの避難訓練=2016年10月、仙台市青葉区(管理組合提供)】



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