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第4部 実名の価値 D地域力で弱者支援

平常時から名簿共有
2017年4月12日

 「災害時要援護者」。高齢者に犠牲が集中し、この言葉が使われるきっかけとなった2004年7月の新潟・福島豪雨と同10月の中越地震。1年間に2度の激甚災害を経験した新潟県見附(みつけ)市は、その教訓から高齢者や障害者らの避難対策に力を入れている。

 柱となるのが、災害弱者の避難を支援する住民を事前に登録する防災ファミリーサポート制度だ。被災翌年の05年度に始めた。

 自力避難が困難な人や独居高齢者など支援が必要な1人に対し、住民2〜3人をマッチング。市企画調整課の姉ア晋悟主任は「情報を共有し、事前に地域で支援への理解を得る。町内一体となってサポートする考え方だ」と狙いを語る。

 課題もあった。同市の高齢化率は約30%に上り、必要な支援者は年々増えていく。そこで15年度から▽要介護認定3以上▽療育手帳Aの交付−などに対象者を絞り込み、対応することにした。

 ただ、それは平時からの名簿提供に同意した人に限られる。「未同意者」の避難支援はどうすべきか。

 そこで導入したのが、未同意者名簿と居住地が分かる住宅地図を入れた封筒を密封した状態で、民生委員などが保管する方法だった。水害の場合は避難情報発令時、地震は震度5弱以上の場合に開封する。

 「どうしても個人情報が壁になるケースがある中で、災害時にすぐに動くことができる強みがある」。同市民生委員児童委員連絡協議会前会長の星野淳さん(77)は、こう語る。

 実際、11年7月の豪雨災害で市が避難情報が発令された区域の民生委員に開封を指示。未同意者も含め、迅速な安否確認や避難行動につながったという。

 民生委員の真島憲一さん(73)は「よりよい形にしていくことが必要。大規模災害時は地元の自主防災組織との連携がなければ対応できないだろう」と強調。姉ア主任は「開封後の対応や未同意者名簿の配布先拡充など、さらに議論していきたい」と語る。

 東海地震、南海トラフ地震の防災対策強化・推進地域に指定されている長野県茅野(ちの)市。15年4月施行の「災害に強い支え合いのまちづくり条例」で、警察、消防、民生委員には同意の有無にかかわらず平時から、要支援者の名簿を提供すると定めた。

 事前提供は要支援者の漏れを防ぐことにもつながった。「日中は1人」「今は息子夫婦と同居していない」…。地域を知る民生委員からの情報を基に、名簿には市が掲載していた2500人に加え、約50人が追加登録された。

 同市危機管理室防災課の柳沢正広課長補佐兼防災係長は「行政の情報が生活実態と合わないこともある。(事前提供で)平時から複数の目で見守る態勢をつくる」と意義を説明する。

 災害時、防災活動の基盤となる地域力。それは、平時から一人一人が意識して準備しなければ発揮できない。両市の取り組みがその重要性を示している。

【写真堰′ゥ附市が未同意者名簿と住宅地図を入れる封筒。取扱注意とし、密封した状態で民生委員などに渡している】

【写真=2004年7月の新潟・福島豪雨の被災状況を振り返る真島憲一さん(左)と星野淳さん。災害の教訓が災害弱者対策の強化につながっている=新潟県見附市】

 茅野市災害に強い支え合いのまちづくり条例 地域活動への参加意識の低下や自治会への未加入者の増加などコミュニティーの希薄化が進む中で、市民と市が連携し、地域で人と人とが支え合う、安全で安心な災害に強いまちづくりのために制定。15年4月1日施行。避難行動要支援者に対する支援について▽名簿の作成▽名簿情報の提供▽避難支援等関係者の役割−などを定める。名簿情報は「長野県警察、諏訪広域消防および民生委員へ提供する場合に限り、名簿情報を提供することについて本人の同意を得ることを要しないものとする」とし、平常時から情報を共有している。


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