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第4部 実名の価値 C公表基準の検討

要配慮者へ対策課題
2017年4月11日

 行方不明者の氏名は公開されるべき公共の情報−。氏名公表を「常識」と位置付け、行政もメディアも動く米国。一方、日本では個人情報保護や家族の意向を理由に、当局が非公表とするケースが少なくない。そんな中、災害時の不明者氏名の公表について、独自の基準作りに動きだした自治体がある。

 「起こり得る災害の種類や規模はさまざま。災害時に判断するために、具体的に考え、事前に議論することが求められる」

 2015年度から検討を進める京都市。防災や広報、個人情報保護、保健福祉など関係する担当部署の課長ら7、8人で構成するワーキンググループのメンバーの一人、市防災危機管理室の藤本雅一防災課長は、意義を説明する。

 検討の背景にあるのは、14年に発生した広島市の土砂災害や15年の関東・東北豪雨など、自治体によって氏名公表の対応が分かれた災害事例だ。「市として方向性を持っていなければいけない」。門川大作市長の判断だった。

 他の政令市の基準の有無や災害対策基本法、個人情報保護条例など法制の情報共有から始め、昨年6月までに会合を3回開催。その中で出た、公表への「壁」はDV(ドメスティックバイオレンス)やストーカーの被害者など配慮が必要な住民への対応と、個人情報保護の観点だった。

 行政の相談窓口などを利用する要配慮者は存在を把握できるが、事前に知り得ないケースもある。さまざまな災害規模が想定される中で、公益性と個人情報保護をいかに考慮するのか…。明確な結論はまだ出ていない。

 震災後に改正された災害対策基本法では、自治体は被災者の安否に関する情報照会に回答できると明記。だが「不明者の氏名公表を定めているものではない」(内閣府防災担当)。判断は原則、各自治体に委ねられる。

 京都市はこれまでの検討を基に、「家族の要望や同意など条件付きで公表する」という素案を作成。関係機関での正確な情報共有に向けて、京都府警との話し合いも行っている。

 災害時の迅速な情報収集、発信は人命に関わる。

 藤本課長は「『公表』となれば問い合わせの増加も見込まれ、安否照会の手順も必要だ。組織としての人員の問題もあり、いろいろな意見を踏まえて結論を出さなければいけない」と模索を続ける。

 震災を機に「災害復興法学」を創設し、防災士の資格も持つ岡本正弁護士(第一東京弁護士会所属)は「備えていたことしか緊急時にはできないことは過去の災害が証明している。基準作りは好ましい方向性だ」と取り組みを評価する。

 その上で、「人命救助のために何を優先すべきかを考えれば、ルールの有無にかかわらず、個人情報の利活用が不可欠な場面には開示や提供をちゅうちょすべきではない」と強調する。

【写真=行方不明者の氏名公表の在り方について意見を交わす藤本雅一防災課長(右)とワーキンググループのメンバー。独自の基準策定に向けて議論を重ねる=京都市】



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