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第4部 実名の価値 B「カトリーナ」の教訓

日本の非公表に疑問
2017年4月9日

 「OVER 1100 CITIZENS LOST THEIR LIVES IN THE DISASTER(1100人を超える市民の命が災害で失われた)」

 米ルイジアナ州ニューオーリンズ郊外に、米国史上最大級のハリケーン「カトリーナ」で犠牲になった市民の慰霊碑がある。被災から12年。周囲には三十数人の身元不明者も埋葬され、花が手向けられていた。

 「米国のTSUNAMI(ツナミ)」とも言われたカトリーナ。鎮魂の思いは東日本大震災の被災地と変わらない。だが、災害時に行方不明者の氏名を公表することが当たり前という米国の人たちは、「非公表」に傾く日本に疑問を投げ掛ける。

 「災害時は情報開示を求める公共の権利が、プライバシーを求める個人の権利を上回る」

 カトリーナ襲来時、北部ミネソタ州に4カ月余り避難を余儀なくされたロヨラ大法科大学院教授の楠田弘子弁護士(55)=長崎市出身=は、こう指摘する。

 ニューオーリンズに残った人の安否を確認する手段はなく、自身も実名発表の重要性を身に染みて感じた。「氏名公表は命を守るためのルール。日本で家族の意向が重視されることは、知る権利がないがしろにされているとも言える」と手厳しい。

 地元紙タイムズ・ピカユーン紙で記者を務め、今年3月まで同紙を経営するノラメディアグループ副社長を務めたジェームズ・オバーン氏(57)は「公表しないのは深刻な問題だ。犠牲者の生きた証しを発信する報道こそが、当局に対するプレッシャーにつながるのではないか」とメディアの背中を押す。

 同紙はカトリーナ後も、災害時に死者・行方不明者の氏名を伝えることを「報道の責務」としてきた。テリー・バケット編集部長(55)も「悲しい出来事であってもみんなが知るべき情報。今後も重視して取り組む」との姿勢だ。

 約3千人が犠牲となった2001年9月11日の米中枢同時テロ。ニューヨーク・タイムズ紙も、記者が遺族一人一人を訪ね歩き、犠牲者の氏名と人となりの掲載を紙面で続けた。

 「顔のない犠牲者にしてはいけない」

 同社東京支局長のリッチ素子氏(47)=米カリフォルニア州出身=は、災害やテロに見舞われた際に死者や行方不明者の氏名を伝える意義をこう説明する。

 「誰が亡くなって、どんな影響があるのか。そしてその方々が確かに生きていたことを伝える必要がある。東日本大震災で行方不明者の名前が公表されないことは、悲しむべきことだった」と受け止める。

 災害時に不明者の実名を公表することは命を守り、生きた証しを伝えることにつながる。米国では市民もメディアも当局もそれを当然のことと捉えていた。日本でも13年に改正された災害対策基本法で安否情報が規定された。毎年のように発生する自然災害に備え、「命の名簿」の重要性をもっと共有する必要がある。

【写真堰<Jトリーナで犠牲となった1100人余りを弔う慰霊碑。日米の行方不明者の氏名公表に対する認識の違いが浮き彫りとなった=米国・ニューオーリンズ】

【写真=被災当時の紙面を示し「犠牲者の情報提供は社会に対する奉仕だ」と意義を語るテリー・バケット編集部長=米国・ニューオーリンズのタイムズ・ピカユーン社】



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