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第3部 見過ごされる名前 D都市の盲点

「共助」の在り方課題
2017年3月6日

 災害時に命を守るために欠かせない、平常時からの関係づくりに立ちはだかる「個人情報」の壁。それが端的に表れているのが都市部のマンションだ。

 「日々声掛けし、交流の場もつくるが、生活サイクルも違うので住民全ての顔が分かる訳ではない」。盛岡市盛岡駅西通のマンションで管理組合理事長を務める片方弘尚(かたがたひろなお)さん(64)は語る。

 東日本大震災時は、区分所有者名簿を持つ管理会社を通じて安否確認や被災の有無を確認した。大きな被害は無かったが、「組合として家族構成や要支援者の存在を把握しておくべき」と痛感。居住者台帳作りを考えている。

 だが、課題は多い。

 マンションは築14年。居室の賃貸も増え、外部とのつながりを望まない住民もいる。総会案内に返事がない「欠席」もあり、運営への意識の差があるのが現状だ。片方さんは「個人情報の提供に理解を得るのはハードルが高い。どこまで踏み込むべきか」と悩む。

 県マンション管理士会の高橋慎一会長(67)=盛岡市=は「居住者の防災意識は高いとは言えない」と強調。「民生委員らから(マンション内は)災害弱者の把握が難しいとの声も聞く」とも述べ、地域との連携の課題も指摘する。

 盛岡市の桜城小周辺の世帯で構成する大通三丁目第二町内会(野坂良行会長)。約500世帯のうち、戸建て住宅は40世帯ほどで、残りはマンションやアパートがほとんとだ。

 同町内会は防災訓練や、高齢者の災害対策を話し合う懇談会などを年1回以上開催。マンションにも案内を出すが、参加申込書に名前を書きたがらない人も。管理人が常駐しない場合はさらに声掛けが難しいという。

 同町内会に加入するマンション管理組合の矢部公輔理事長(74)=同市大通3丁目=は「助け合うには人同士のつながりが絶対だ。催しへの参加者は固定化の傾向があり、住民各自が意識を持つことが必要だ」と実感している。

 震災時、住民が率先して炊き出しを行った姿に「地域の底力」を感じたという野坂会長(82)。「だからこそ、普段から『共助』の部分を強めたい」と述べ、改善策を探る。

 匿名性が高く、地域コミュニティーの中で「孤立」の懸念もあるマンション。防災対策や地域連携はどのように進めていくべきか。

 「個人情報の壁に加え、マンションはいろいろな考えを持つ居住者の集まり。防災対策を進めるには、モデルケースの提示や専門家派遣の助成など行政支援も必要ではないか」。高橋会長は訴える。

 大規模災害時に「見過ごされる名前」をなくし、命を守るためには、やはり人と人のつながりが必要だ。

 震災で重要性が再認識された共助。社会の匿名化が拡大する今、地域や時代に合ったコミュニティー、そして共助の在り方が問われている。

(第3部終わり)

【写真=盛岡市中心部に林立するマンションと総会出席者表のコラージュ。匿名性の高いマンションで災害時の「共助」の在り方が課題となっている】



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