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第2部 命の名簿 E作成の動き

大災害時、原則公表に
2017年2月7日

 昨年11月22日早朝。福島県沖を震源とするマグニチュード(M)7・4の地震が発生し、本県沿岸に津波注意報が出された。大船渡市は避難勧告を発令し、同市大船渡町の大船渡地区公民館には、午前6時すぎから避難者が集まり始めた。

 避難してきた住民が受付で名前や住所などを用紙に記入する。

 「東日本大震災で名簿の重要性を実感した」

 こう語るのは、同市大船渡町の田中将昭さん(66)だ。震災時も同公民館に避難し、名簿によって自身の生存を伝えることができた。「連絡が取れない中で、災害時にこそ名簿が有効だと思う」

 同日、本県沿岸部では大船渡市を含む12市町村が避難指示・勧告を発令し、避難所などに最大約1800人が避難。岩手日報社の調査によると、そのうち8市町村が全避難所、2市が一部の避難所で名簿を作成した。

 大船渡市は震災を教訓とし、2013年度の市主催防災訓練から、避難者名簿の作成を徹底。本年度中に策定する避難所運営マニュアルにも名簿作成を規定し、避難者、在宅避難者の名簿様式などを設けた。

 マニュアル案では、安否情報の開示に同意した避難者の「照会用避難者名簿」を作ることも明記。照会用は個人情報保護の観点から、氏名や性別、住所にとどめるが、各避難所に掲示することとしている。

 市防災管理室の森正主幹は「名簿の必要性は住民もよく理解している。ただ公表については、さまざまな事情で教えたくないという人もおり、本人の同意は必要だ」と説明する。その背景には配偶者からの暴力やストーカー行為、児童虐待など配慮すべき人々の存在がある。

 県が14年3月に作成した市町村避難所運営マニュアル作成モデル。避難者名簿の公表について、「必ず避難者の同意を得て、公開する個人情報を限定する」とし、名簿様式には「安否情報提供の可否」の欄を設けている。

 しかし、災害が大規模になればなるほど情報収集は困難になり、災害対応に追われる自治体では確認する人員の確保も課題となる。

 県保健福祉企画室の菊池優幸管理課長は「災害規模や地域の実情などに応じてその時々で検討が必要になるだろう。どこまでの情報を出すのかも議論が必要だ」との認識を示す。

 個人情報保護と災害−。発生が懸念される南海トラフ巨大地震や首都直下地震では、大都市圏を中心に安否確認が極めて困難になる状況も想定される。それは最大の混乱を招きかねない。

 近年、匿名化が広がりを見せているが、大規模災害時の避難者名簿は原則公表とし、作成・公表の在り方を考える必要がある。

(第2部終わり)

【写真=大船渡地区公民館に避難し、受付で名前や住所などを記入する住民。名簿作成・公表には個人情報保護の課題もあり、議論が求められる=2016年11月22日、大船渡市大船渡町】



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