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第1部 安否を伝える D行政の判断

個人情報、過度に重視
2017年1月7日

 岩泉町役場で、わずか1日で消えたホワイトボードがあった。

 台風10号豪雨から3日後の昨年9月2日午後。岩泉町は、安否未確認者がいる地区名や氏名などを記したボードを役場の廊下に置いた。報道機関への情報提供のためだった。

 県や岩泉町の個人情報保護条例では「個人の生命、身体又は財産を保護するため、緊急かつやむを得ないと認められるとき」は例外とし、個人情報を提供することができるとしている。

 だが、情報は翌3日には消され、安否未確認者の人数だけに変わった。

 岩泉署から「個人情報なのでまずい」との指摘を受けてのことだった。町は、安否未確認者の名簿提供も「不可」とした。

 その後、県は行方不明者の氏名について家族の同意が得られた人だけを公表すると決めた。県総合防災室の石川義晃室長は「今回は行方不明になったことを住民が分かっており、公表するメリットが見いだしにくかった。個人情報保護の点から、家族に公表の意向を聞いた」と説明する。

 母田代フクさん(73)と兄安享(やすゆき)さん(52)を亡くした、岩泉町尼額(あまびたい)の山崎恵さん(49)にも、行方不明の段階で町役場から氏名公表について確認の電話が入った。「地域の人など知ってほしい人は知っている。捜索も行われ、震災のときのように多くの人がどこにいるか分からない状況とは違う」と非公表を望んだ。

 県が行方不明者の氏名を発表した9月7日現在で、公表したのは宮古市の1人だけ。岩泉町の5人は非公表、1人は家族と連絡が取れていないとした。結果的に非公表が多くなったが、岩泉町総務課の佐々木久幸総務文書室長は「(公表か非公表か)どちらかを勧める聞き方はしていない」と語る。

 一方で、行政の中では個人情報の取り扱いに臆病になりすぎている面もうかがえる。

 岩泉町のある幹部は「家族とのトラブルを避けるためにも、氏名を出さない方が無難」と吐露する。県警関係者も「メディアスクラム(集団的過熱取材)などを考慮すると、『名前は出しません』とこちらから説明することもあり得る」と明かす。

 東日本大震災では5万人に上る避難者名簿が報道され、安否確認につながった。大規模災害になるほど、発災初期の「最も知りたい」「知らなければならない」情報は、実名による安否情報だ。

 県総合防災室の石川室長は「ケース・バイ・ケースで判断する。行方不明者が広範囲にいる場合は、氏名を公表するかもしれない」との見解を示す。

 近年、個人情報保護を理由に匿名化が拡大傾向にある。しかし、大規模災害時は逆にそれが不安や混乱をもたらしかねない。

(第1部終わり)

【写真=岩泉町役場の廊下に設置された台風10号豪雨の被害状況を伝えるホワイトボード。一時、安否情報についての記載もあった】



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