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第1部 安否を伝える Bあいまいな犠牲者

行政間に認識の違い
2017年1月5日

 宮古市川井の小国(おぐに)川沿いで大きくひしゃげ、横倒れになった白い車が今も風雪にさらされている。運転していた同市小国の沢田和利さん(65)は台風10号豪雨が襲来した昨年8月30日夜に車で外出し、行方が分からなくなった。

 この沢田さんをめぐって、県と宮古市で認識の違いが生じている。

 県は「県警の情報もあり、台風10号による行方不明者として判断した」(石川義晃総合防災室長)。家族の同意が得られたとして沢田さんの氏名、年齢も9月7日に公表した。

 一方、宮古市は「台風関連にするか判断しかねている」(芳賀直樹危機管理監)。県から行方不明者にするとの連絡は受けたが、同市の台風被害をまとめた資料(11月30日現在)にも人的被害の項目は設けていない。

 市や家族らによると、沢田さんが自宅を出たのは雨が降りやみ、小国川の水量も下がり始めた午後9時ごろ。車を運転している姿を住民が目撃している。数日間外出することは以前もあり、家族は「いずれ戻ってくる」と思っていた。しかし、消息が分からないまま時間が過ぎ、9月3日に宮古署に届け出た。

 同日、自宅から北に約8キロ離れた小国川沿いで沢田さんの車が見つかった。4日からは警察や消防、市消防団などによる捜索が行われた。ヘリによる上空からの捜索も行われたが、沢田さんはいまだに見つかっていない。

 国が定める災害の被害認定基準では行方不明者は「当該災害が原因で所在不明となり、かつ死亡の疑いのあるものとする」とある。

 宮古市の芳賀危機管理監は「当時の気象状況や家族の話などから、台風による行方不明か確証が得られていない。悩んだまま今に至るが、市民がいなくなったことに変わりはない」と説明する。

 捜索に携わった人の思いは複雑だ。「台風で行方不明になったとの認識で、早く見つかってほしいと活動した」。小国地区を管轄する市消防団第44分団長の湯沢隆弘さん(60)は語る。

 沢田さんの自宅は被災しておらず、関連性の判断が難しいとの見方もある。しかし、沢田さんと一緒に住んでいた、おいの裕之さん(52)=同市小国=は「車も見つかって、台風行方不明者として捜索してもらっている。(市の判断は)何でという思いはある」と胸の内を明かす。

 宮古市は今後、捜索状況や遺留品などから確証が得られれば「市の被害資料に人的被害として記すこともあり得る」という。

 今も行方が分からず、行政の中でも認識の違いで「あいまいな存在」になっている沢田さん。災害時の安否確認の難しさ、情報発信の課題を浮き彫りにしている。

【写真=小国川沿いで見つかった沢田和利さんの車と台風10号の被害状況をまとめた県資料のコラージュ。認識の違いで「あいまいな存在」になっている】



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