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2017.12.1

 この12年、変わらずに貫いてきたことがあったろうか。自らの軌跡を顧みて、小山実稚恵さんのピアノに居住まいを正す。先週末、都内で開かれたリサイタルは、感動的なひとときだった

▼2006年春から始まった12年間・24回シリーズ「ピアノで綴(つづ)るロマンの旅」最終公演。色彩感に富むピアノが特徴だけに、「白」「紫」「金」など公演ごとにテーマの色を掲げ、今回の「銀」で24色となった

▼その最終演目は、ベートーベン最後のソナタ「第32番」。シリーズのアイデアを練り始めた14年前の時点で、この曲を演奏することを決めていたという。揺るがぬ意志で歩み続けた到達点。比類ない演奏だった

▼この12年、いろいろあった。とりわけ東日本大震災。あの日、時間が止まった。世界から色彩が失われたような気がした。それでも音楽は流れる。震災前と震災後でどこか途切れたままの心を、小山さんのショパンが、ベートーベンが結び直してくれる

▼長い音の旅を終えた小山さん。楽屋では普段と変わらぬ笑顔で迎えてくれた。「ベートーベンの音楽は、人間が前進していく力、不屈の魂といったものを感じさせてくれる。私も前に進んでいきたいな」。さらなる高みへ、小山さんの新たな旅が始まる

▼はや12月。新たな年が巡り来る。振り返り、前に進みたい。人間には、力がある。


   
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