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2017.5.19

 いくつもの時間を生きる。イクメンの日々は、このことを実感させてくれる貴重な経験だった。きっかけは妻の重い病気。積極的に育児や家事を担う爽やかなイクメン像からは、ほど遠かったことだろう

▼とにかく時間がない。仕事途中でも保育園のお迎え時間は厳守。晩ご飯を作って食べさせ、後片付けして家計簿をつけ、そのうちスーパーの閉店時間が迫る。仕事の時間と家庭の時間、妻の時間と子どもの時間

▼それぞれに異なる時間を駆け抜け、午前0時過ぎ。タマネギをしんなりするまで炒めカレーを煮込む。この時間は確かに自分の時間。そんな日々を送るうち、いつの間にか、職場以外の人間関係が広がっていた

▼社会学者水無田気流(みなしたきりう)さんの著書のタイトルでもある「『居場所』のない男、『時間』がない女」とは言い得て妙。この国の「時空の歪(ゆが)み」を直すため、男性も含めた労働と家庭生活のあり方の再編を呼び掛ける

▼伸び悩む男性の育児休業取得。厚生労働省は取得率アップに向け利用促進策の検討を始めた。育児や家事の分担は、女性の負担軽減はむろん、男性が職場以外の「居場所」を広げる上でもいい経験になるはずだ

▼イクメン奮闘当時、「男なのに偉い」と褒められたことがあった。ちょっとうれしかったが、よく考えればおかしな話。それだけ時空の歪みは大きい。


   
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