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2017.4.21

 東西文明の十字路トルコ。今月、大統領に実権を集中する憲法改正の是非を問う国民投票で、賛成が反対をわずかに上回った。シリア内戦に伴うテロの多発を受け、安定を望んだ国民の危機感が背景にある

▼だが、その先は本当に安定だろうか。政教分離の世俗主義の下で近代化を進めてきた同国が、イスラム色の強い大統領の長期強権統治に道を開いた。大統領支持派と世俗派の分断、民主主義の後退に伴う欧州との対立も懸念される

▼トルコをより深く理解する手がかりになるのが、同国人初のノーベル文学賞作家オルハン・パムク氏の諸作だ。小説や講演録を読むと、宗教も文化も日本と大きく様相を異にする国でありながら、不思議な親近感を覚える

▼「東と西とどちらが正しいか、どちらがいいのかではなくて、あるものが他の方に移ったとき、失った方の心が痛みますね、人の心の痛み、悲哀、そこが書きたかったんです」(「父のトランク」2007年)

▼祖国と西欧、伝統と近代とのはざまで引き裂かれる文化の中から生み出される物語。人々の葛藤、苦悩、悲哀。それはまさに、急速な西欧化を推し進めた近代日本の軌跡と心情に重なり合う

▼テロに翻弄(ほんろう)される世界情勢の中で、各国の歴史、悲しみも見つめたい。「正しさ」の応酬ではなく、相互理解からこそ分断は超えられる。


   
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