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2017.3.20

 初々しい丸刈りの20人がほやほやのグラウンドに足を踏み入れたのは約30年前。見渡せば田んぼ。簡素なネットが張り巡らされただけの校庭で不来方高野球部は産声を上げた

▼バットは2本、ボールは12個。田んぼの水にボールが漬からないよう長靴は必需品だった。それでも少年たちは初めて手にする硬式ボールの感触がうれしかった

▼強力な助っ人はオヤジたちだった。農作業の途中、軽トラで球拾いに駆け付けたり、息子の練習の手伝いにとわざわざ転職した親もいた。歴史を刻む楽しさをみんなで分かち合っていた。俺たちが新しい時代を創るんだと

▼最後となった3年の県大会準々決勝。ベンチから外れた双子の兄が背番号のないユニホームでスタンドから声援を送った。視線の先は背番号20の弟。ナイターの光が照らす涙と汗。「不来方、最高でした」。敗戦後、気丈に胸を張った兄の姿を今も思い出す

▼きのう開幕した選抜高校野球大会。国歌を独唱した同校の竹内菜緒さんの歌声を聞き、当時の光景が去来した。時代は巡る。草創期を担った球児たちもオヤジ世代。夢舞台を踏んだ後輩たちの姿はどう映ったか

▼果たせなかった夢があるから、いつまでも心がときめく。積年、描き続けた思いは後輩たちへの応援歌。さて、きょうは盛岡大付高が初戦に挑む。岩手の球春の幕開けだ。


   
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