津波防災、海越え共有 インドネシアと本県の比較行動


 【東京支社】首都大学東京の研究員ヌルジャナさん(42)は29日、東京都日野市の同大で開かれた論文公聴会で、日本とインドネシアの津波防災に関する博士申請論文を発表した。岩手日報社と同大の渡辺英徳准教授の研究室が共同制作した東日本大震災のデジタルアーカイブ「犠牲者の行動記録」や、提言「命を守る5年の誓い」を活用した。インドネシアを襲った過去の津波の情報を掲載したアーカイブも制作。幅広い地域で教訓を共有し、若い世代へ伝える意義を説いた。

 ヌルジャナさんは2004年のスマトラ沖地震の津波で約16万人が亡くなったインドネシア・アチェ州出身。14年に来日し、研究を重ねてきた。本紙と渡辺研究室が手掛けた「行動記録」のインドネシア語版翻訳も担当した。

 行動記録と12年に発生したアチェ地震時の住民の行動を比較。アチェ地震では津波を警戒し、多くの人が避難した。本県沿岸では低地の避難所で多大な犠牲があったが、津波被災の記憶が新しいアチェでは高所に逃げる傾向があった。「避難所の安全を信じている人は少なく、とにかく高い場所へ逃げた」と指摘した。

 ヌルジャナさんは、本県では高齢者ら災害弱者が逃げられず亡くなったが、アチェでは避難所に逃げた一方、高台を目指す車が殺到して危険だったことも指摘した。研究の参考として、16年の本紙長期連載「てんでんこ 未来へ」にも言及した。

 ヌルジャナさん制作のアーカイブは▽津波襲来の歴史▽過去の震源▽経験者へのインタビュー▽建築物の変化―などをデジタル地図上で展開。学習効果も検証した。フェイスブックなど会員制交流サイト(SNS)を通じて若年層に情報を伝える試みも行う。

【写真=岩手日報紙面を紹介しながら、論文を発表するヌルジャナさん】

(2018/01/30)
[PR]

トップへ