不明妻の「あの日」出版 釜石の男性、震災の真実求め


 東日本大震災時に鵜住居(うのすまい)小の事務職員で、津波で行方不明になった木村タカ子さん=当時(53)=の夫の正明さん(59)=釜石市甲子(かっし)町=は、真相を知るために学校などと重ねてきた話し合いをまとめた本「語ることにした」を500部自費出版した。今後大災害が起きた時に同じような犠牲者を出したくない、真実を知りたいという一心で続けたやりとりを伝える。

 震災ではタカ子さんだけが同校の校舎に残り、行方不明になった。木村さんは2011年6月からこれまでに計15回、事実確認のため学校や市教委と話し合いを重ねてきた。タカ子さんが来校した保護者の対応をせざるを得ない状況だったことは分かったが、校舎に残った詳しい理由ははっきりしていない。

 3月上旬に完成した本はA4判255ページ。話し合いの書き起こしや寄稿文で構成し、当初は300部作った。木村さんが市側に学校などでの活用を求め、配置するとの回答を得たことから増刷。公民館や図書館に置く分を含め100部を市に寄贈した。

 同校と釜石東中の生徒が高台に避難した行動は「釜石の奇跡」とたたえられたが、タカ子さんのほか、保護者に引き渡して犠牲になった児童もいた。話し合いの中で木村さんは「『奇跡』という言葉を使うことで教訓にすべき事実が消される」と訴えてきた。市は木村さんとの話し合いなどを通じ、現在は「釜石の出来事」と言い換えている。

【写真=「地元の人でも知らない事実がある」と思いを語る木村正明さん】

(2015/05/19)
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