新聞の魅力、等身大で NIEに岩手大生挑戦


 教師を志す岩手大教育学部3年の4人は、将来の実践に向けて新聞活用の考え方や手法を学んでいる。日本新聞協会認定NIEアドバイザーの女鹿芳文さん(県教委学校調整課主任指導主事)を講師に、今春からスクラップやワークシートづくりなどを演習。教育実習のクラスでは記事を題材に話したり、スクラップの仕方を紹介した。子どもたちに新聞の面白さを伝えようと「教師の卵たち」の奮闘を伝える。

震災時に発信 絆結ぶ 鈴木 千尋さん

 鈴木千尋さん(21)は、岩手大付属小5年たけ組で東日本大震災時の経験を語り、新聞が果たした役割を伝えた。中学生だった鈴木さんは、避難者向けに救援物資の配布予定などを書いた新聞を作成した活動を紹介。「必要な情報を早く届けたいという思いだった」と語り、児童らは真剣な表情で聞き入った。

 鈴木さんは、宮古・河南中2年のときに大震災に遭った。「一瞬にして現実が失われていく様子は忘れられない」と語り、何かできることをしたいと生徒会の仲間と新聞発行を思い立った。避難者向けのさまざまな生活情報のほか、学校再開後は体育祭や文化祭などの行事を盛り込み、地域住民と交流を図ったという。

 たけ組は鈴木さんが教育実習時に配属されたクラス。担任の関戸裕教諭が新聞の良さを学ぶ総合的な学習の一環として講師に招いた。鈴木さんは、震災時の話だけでなく、新聞活用を目指してスクラップの仕方も伝えた。「記事を選んで切り抜くことで理解がより深まる。また複数の新聞を読み比べると、自分の見方や考え方が広がる」と紹介した。

 末藤琉海(るか)君は「災害が起きたときは特に正確な情報を届けることが大事だとあらためて分かった。スクラップ活動はやりがいがありそう」と語った。

 鈴木さんは「新聞には、テレビやインターネットだけで伝えきれない情報を発信する力がある。私が感じている良さを子どもたちに伝えることができたならうれしい」と笑顔を見せた。

読む経験が人生彩る 高橋 龍太郎さん

 高橋龍太郎さん(20)は、読書の意味を問う投稿記事を基に「読むこと」から得られる豊かな経験について、岩手大付属中2年A組の生徒と考えた。

 大学生と中学生が書いた「読書は趣味の範囲。押しつけないでほしい」という趣旨の二つの記事を提示。「私やみんなと同じ年頃の人たちの意見だが、本は読みたい人だけが読めばいいのだろうか」と問い掛けた。

 生徒からは、新たな知識を得られる一方で、感想文などの課題では「読まなければならない」と捉えがちな意見も。高橋さんは「登場人物の感情を味わい、その人生を仮想体験できるのが大きな魅力。今後、生きていく上での糧になるはず」と体験を交えながら話した。

 井上匠人(たくと)さんは「大人は本を読むことを当たり前のように勧めるが、(高橋さんの話は)普段意識していないことを考える機会になった。『自分で考えて意味を探す』視点を大事にしたい」と語った。

 新聞を活用した話題を選んだことについて高橋さんは「記事や見出しなど新聞独特の面白さにもっと触れてもらいたい」と説明した。

多様な視点に触れて 高橋 和希さん

 高橋和希さん(20)=ニュージーランド・クライストチャーチ市に留学中=は岩手大付属中1年D組の朝の学活で文部科学省が導入を目指すテレビ会議システムを使った遠隔合同授業の記事を基にスピーチした。

 離島や山間部の小規模校同士や小規模校と都会の大規模校をつなぎ、少人数の学級でも多様な意見に触れ考えの幅を広げることを目標に同省が来年度から取り組むという記事。

 北上市出身の高橋さんは自身や友人の経験を踏まえ地方と都会の生活、学習環境の違いを説明。それぞれの児童生徒が意見交換し、考えを広げることへの期待を訴えた。

 内藤真美さんと長谷部大夢さんは「普段は思いも寄らない山間部の同世代の人の生活を考えることができた」「人数が違う学校間の授業交流に興味がわいた。僕たちとは違う視点で記事を紹介してもらった」と興味津々。

 大学に入り新聞を読み始めたという高橋さんは「新聞が面白いことに気付き、中学生の時から読んでいたら成績も上がったかもしれないと感じた。子どもたちにはぜひ新聞を手にとってほしい」と期待した。

世の中を知る教室に 木村  愛さん

 木村愛さん(20)は「NIE学習会」に毎回参加。2日の新聞スクラップの作り方講座では「園児の焼き芋作り」を切り抜いた。女鹿さんの出したテーマは「ハッピーになる記事」。木村さんは「校庭で落ち葉を集め芋を焼いた子どものころを思い出した」と笑顔をみせた。

 学習会には、ゼミで誘われ参加。1人暮らしで縁遠くなっていた新聞だが、図書館に足を運び閲覧するように。新聞を読まない生活から「脱却」した。

 文章が長くとっつきにくい印象だった新聞が、読んでみると「要点をまとめ、読みやすく、すんなり頭に入る」と実感。教育関係のニュースなど、勉強や生活に必要な情報が多いことに気付き、たくさんの記事が一覧できることで思いも寄らない情報に出合う楽しさを知った。

 「ニュースに対する感じ方は人それぞれ」と話す木村さん。「教師になったら、子どもたちに読んであげたい。何かを感じてくれると思う。教室にスクラップを貼るだけでも学校で世の中の出来事を知るきっかけになりそう」と社会に開かれた学びの場を思い描く。

【写真右上=東日本大震災の経験を交え新聞の良さについて話す鈴木千尋さん】

【写真左上=投稿記事を基に、読書の意味を問い掛けた高橋龍太郎さん】

【写真右下=新聞記事を手に遠隔合同授業への期待を語る高橋和希さん】

【写真左下=園児が焼き芋を作る記事を切り抜き、選んだ理由を説明する木村愛さん】

(2017/11/08)
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