WWW http://www.iwate-np.co.jp




 9月1日は「防災の日」。1923(大正12)年9月1日に起こった関東大震災は甚大な被害をもたらした。この日は、台風が襲来しやすい「二百十日」にあたることも多い。
 地震、台風、大雨、津波、火山…。災害はいつ、どこで発生するか分からない。5月の中国・四川大地震は、歴史に残る大災害となった。県内でも、震度6強を記録した岩手・宮城内陸地震(6月14日)、岩手北部地震(7月24日)が発生したばかり。崩れた道路や橋、避難所での生活。被害の記憶は生々しい。
 「災害はいつか必ず起きる」。身の回りの防災用品の確認、避難経路や避難場所の確認、家屋の点検・補強、家族との連絡方法…。大切な家族や生命、財産を守るためにも、「もしも」に備えて、日ごろの防災準備と正しい知識を持つことが欠かせない。


@
高めたい防災意識

◇まず身の安全を 県が10カ条


 冷静な行動が肝心

 突然やってくる地震。大地震に相次いで見舞われた本県で、住民は地震発生時にどのように安全を確保すればよいだろうか。

 県は「地震から身を守るための10カ条」をつくり、県民に示している。▽すばやく火の始末▽戸を開けて出口を確保▽外へ逃げるときは慌てずに▽狭い路地やブロック塀には近づかない―など、どれも基本的なことだが、普段から意識し、いざというときにどれだけ冷静に行動できるかが大切だ。

 どこで地震に遭遇するか、状況でも対応が変わってくる。例えば、建物の中では本棚やショーケースから身を離す、家の中でもガラスの破片があるのではだしで歩かない―など。「地震から身を守るための10カ条」と状況に応じた対応を示した「地震発生そのとき…」は、県のホームページで紹介している。

 県総合防災室危機管理担当主査の熊谷和典さんは「まず、自分の身は自分で守るという基本に沿って、けがをしないようにすることが重要。自分の安全が確保できたら周囲の人を助けるなど次の行動に移ってほしい」と説く。


◇治療の優先順位決める トリアージ


消防機関や災害派遣医療チーム(DMAT)などが参加した金ケ崎町での集団災害対応訓練。トリアージへの認識も深めた=8月22日

 住民への浸透が鍵

 同時に多数の傷病者が発生する災害医療の現場で、緊急度や重症度に応じて治療の優先順位を決める「トリアージ」が重視されている。限られた時間と医療スタッフで、救える命を救うための取り組みだ。

 多数の傷病者を前に、医師や看護師が呼吸や出血などそれぞれの患者の症状を確認し、4種類あるタッグ(札)のいずれかを付けて優先順位を決めていく。生命の危険があり最優先での治療を要する患者から、段階的に処置していく。

 トリアージは、医療関係者だけが共有すべき知識ではない。県立大船渡病院救命救急センターの山野目辰味・副センター長は、災害現場での優先順位付けに住民から不満が出るケースを指摘し、「災害医療の知識を住民も持ってほしい」と呼び掛ける。

 近年、県内各地でトリアージの実地訓練が実施されるようになり、「大声で苦痛を訴える人の治療が優先されるわけではない」など、少しずつだがその考え方が理解され始めた。災害時の救命率を高めるために、トリアージの浸透が一層求められている。



◇もしもし、大丈夫? 安否確認に電話の「伝言板」


 災害時に一番心配になるのは、離れ離れになった家族同士や遠く離れた家族・知人・友人が、けがをしていないか、困っていないかの確認だ。すぐに電話が通じれば問題ないが、1995年の阪神・淡路大震災には、予想をはるかに上回る通話が集中し、電話をかけてもつながりにくい状態が5日間続き安否確認すら容易でなかった。

 これを教訓にNTT東日本は「災害用伝言ダイヤル171」のサービスを行っている。震度6弱以上の地震や災害時のみのサービスで、提供開始はテレビやラジオなどで知らせる。利用方法は、「171」とダイヤルするとガイダンスが流れ、指示に従い「1」と「被災地内の自宅の電話番号」を市外局番からダイヤルして30秒以内の伝言を録音。再生する場合は「171」と「2」「被災地内の電話番号」をダイヤルすると伝言を聞くことができる。他人に聞かれたくないメッセージを録音したいときは暗証番号をあらかじめ設定する。

 携帯電話各社は、「災害用伝言板」として同様のサービスを提供している。NTTドコモの場合、大規模災害が発生すると「iMenu」のトップに「災害用伝言板」が現れ、災害が発生した登録可能なエリアからはiモードサービスを利用して「災害用伝言板」から「登録」を選択して、画面に沿って自分の安否情報などメッセージを登録できる。

 また、安否を確認したい人の携帯電話番号を入力することで、登録されたメッセージを見ることができる。他の携帯電話会社の携帯にアクセスする場合は、同様のサービスに一度アクセスする必要がある。

 NTTドコモ東北支社岩手支店の代理店担当主査・橋本知宏さんは「遠くの知人は事情が分からず心配しています。被災していなくてもメッセージの登録で安心してもらえます」とアドバイスする。




A
「万が一」の備え万全に

 いつ、どこで起こるか分からない地震。建物自体に被害はなくても家具の転倒や散乱によってけがを負ったり、逃げ遅れの原因にもなる。火災が発生した場合、散乱状態で避難が遅れると被害はさらに大きくなりかねない。室内での二次被害を防ぎ安全な避難経路を確保するためにも、家具の固定や散乱を最小限に抑える対策などが必要だ。要点ごとに心構えを再確認してみよう。

県立総合防災センター 理解深める体験施設

防災センターの利用案内
▽開館時間 午前9時―午後5時
▽休館日 毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は翌日) 年末年始
▽入館料 無料
▽利用申し込み 防災教育訓練や団体利用は連絡する(019・697・7741)
▽アクセス 盛岡バスセンターから日詰行(北高田経由)高田橋下車徒歩15分 東北線矢幅駅下車徒歩30分


 「地震」「煙」―セミナー人気

 矢巾町藤沢の県立総合防災センターは、防災の日を前に防災体験学習の受講者でにぎわっている。県内で今年、2回の大地震に見舞われたことから、家族連れの見学も増え、指定管理者の県消防協会の佐々木幸延主事は「学んだことを職場や家庭に持ち帰って、安全対策を話し合ってほしい」と願う。

 【防災体験セミナー】1997年の展示品入れ替え、体験コース新設で入館者が増え、年間約1万2000人。企業の研修をはじめ町内会、老人クラブ、障害者団体から幼稚・保育園児まで幅広く利用されている。

 セミナーは▽防災(2時間)▽消火(同)▽避難(同)▽応急措置(3時間)▽防災総合(5時間)▽幼児(1時間30分―2時間)▽一般(1時間)―のコースを用意。ビデオや講義のほか、消火や地震など体験教育に力を入れている。

 【大人から子どもまで】8月下旬、体験学習に同行した。

 花巻市石鳥谷町の八幡保育園(伊藤エト子園長、園児70人)の年長組19人と父母ら約40人が幼児コースを受講した。ビデオのアニメを見て「火遊びはしない」と約束。暗闇・煙体験で恐る恐る真っ暗い部屋を歩き、阪神大震災級の震度7を体験し、テーブルの下に身を固め、物が落ちる恐怖に驚いていた。

 JR東日本盛岡支社の防災管理者・リーダー研修会には同支社総務部安全対策室の五十嵐恵一室長ら管内から54人が参加。初期消火をテーマに講義を受け、実際にホースを使って放水訓練し、消火器の正しい使い方を学んだ。

 【消火器を扱う知恵】JRの研修会で佐々木主事は研修者の質問に答える形で職場・家庭での初期消火のこつ、消火器の扱い方を説明した。

 ▽天ぷら油に火が付いた場合、水をかけるのは厳禁。消火器がなければ、ぬらしたタオルやシーツをかける▽購入の際はNSマーク(日本消防検査協会の検査合格製品)の付いた商品を選ぶ。悪質な業者の訪問販売に注意する▽消火器の中身の有効期限は8年が目安。古くなったら、ごみには出せず、業者に回収してもらう▽家族みんなが取りやすい所に置く―など。



◇命守る安全管理しっかり


 大型家具・家電の転倒防止 2重3重、固定が大事

家具の上部と壁とを固定する転倒防止器具。少しの手間で二次災害防止になる

 ◇大型家具・家電

 避難経路をふさぎ、場合によっては命も奪いかねない大型の本棚、たんす。二段三段に積み重なっているものが多く、揺れに応じてそれぞれが倒れてくる。

 まずは各段をしっかり連結したい。さらに家具上部と壁や天井などを固定。固定する道具は針金式、L字型、つっかえ棒などさまざまなタイプがあるので、家の状況に応じて選ぼう。

 重い本ほど下段に置くことが大事。家具全体の重心が下がるので倒れにくくなる。たんすの場合、大きな揺れの後に余裕があれば、余震に備えて一番下の引き出しを手前に出して置くと、家具を支える役目を果たす場合もある。家電は壁、テレビなどは台座などとしっかり固定することで揺れによる飛び出し、転倒を防ぐことができる。

 ◇家具の配置

 特に寝室の場合は要注意。壁を背にした家具は、固定されていないと前方に倒れてくる。就寝位置は家具の高さの分だけ離れるか、家具の脇に決めたほうが安全。台に乗せたテレビや机の上のパソコンなどは揺れの衝撃で飛び出す可能性もある。

 また家具が倒れて出入り口をふさがれては大変。出入り口には置かない、あるいは万が一倒れても通り抜けられる空間を残せる位置におくように。住宅事情が許せば、寝室になるべく大型家具を置かないのが望ましい。

 ◇ガラス

 ガラスの特徴は「割れる」こと。割れたガラスの破片は凶器となる。家の中ではスリッパなどでけがを防ぐことができる。破片を片付ける余裕がないときは、厚手の敷物などで覆う方法もある。

 食器棚やサイドボードのガラス面は、収納物がとび出そうとする衝突力で割れる恐れがあり、ガラス飛散防止フィルムを張るのも手だ。食器棚の棚板にゴム系のシートを敷くと器類が滑りにくくなる。取っ手に掛け金や強めのゴムをかけておくのも効果的だ。

 ◇台所

 コンロの近くにいた場合、熱せられた調理器具などがコンロから滑り落ちることもある。すぐに火を消せなければ、一度コンロから離れ、揺れが収まってから落ち着いて火を消そう。離れた場所にいた場合、あわてて近寄らず、落ち着いてから消火し、ガスの元栓を閉めよう。

《非常持ち出し品の準備》


 男性15キロ、女性10キロ目安 欲張ると避難に遅れも

 地震・津波や火災、風水害など万一のときに素早く避難できるように、日ごろから非常持ち出し品を準備する心構えが大切だ。

 県立総合防災センターは地震を例に、持ち出し品を欲張ると避難が遅れるので男性なら15キロ、女性は10キロを目安と指導する。一次持ち出し品と、災害復旧までの数日間(最低3日分)を自足できるようにする二次持ち出し品を分けて準備する。


一次持ち出し品(例)

 ▽貴重品 現金(10円玉も)、預貯金通帳、健康保険証など。
 ▽携帯ラジオ 予備電池は多めにストックしておく。
 ▽懐中電灯 予備電池も忘れずに。
 ▽衣類 下着、上着、タオル、紙おむつなど。
 ▽応急医薬品 ばんそうこう、傷薬、包帯、抗生物質、病人やお年寄りの常備薬を忘れずに。
 ▽非常食品 乾パン、缶詰など火を通さないでも食べられるもの。ミネラルウオーター、水筒など。
二次持ち出し品(例)

 ▽食品 米(缶詰やレトルトのごはん、アルファ米も便利)、缶詰やレトルトのおかず、菓子類、梅干しや調味料。
 ▽水 飲料水は1人1日3リットルを目安に。煮沸してから飲む。生活用水は浴槽や洗濯機に貯水しておくと便利。
 ▽燃料 卓上コンロ、固形燃料。ガスボンベは十分なストックが必要。
 ▽お年寄りや乳幼児用食品 粉ミルクや離乳食、流動食、おかゆなど子どもやお年寄り、病人のことも忘れないように。

 
 


◇防災心得メモ◇

 ●運転中に地震を感知したら

 地震を感じたら徐々に速度を落とし、道路の左側に寄せてエンジンを切る。揺れが収まるまで車外に出ず、ラジオで情報を得る。車を離れるときは必ずキーはつけたまま。ドアロックもしない。

 ●揺れを感じたら

 屋内にいる場合、揺れが収まるまで、まずは自分自身の安全を確保する。発生直後に屋外に飛び出すと、落下物にぶつかったり、道路では交通事故に巻き込まれる可能性もあるので、周囲に十分注意する。避難時にはブレーカーを落とす。停電回復後の通電時に火災の原因にもなりうるからだ。
 ●119番の火災通報は正確・簡潔に

 @火災であることA場所(住所)はどこかB建物の種類は。木造かビルかC脱出できないでいる人の有無やけが人D火災現場付近で目印になるもの―を正確に伝える。
 ●集中豪雨に備える

 集中豪雨は予報が困難で、急に注意報や警報が出るので、雨の降り方に注意する。ラジオやテレビから気象情報を得る。停電に備えて懐中電灯や携帯ラジオを用意する。危険な土地ではいつでも避難できる準備態勢をとろう。


専門家が出張調査 耐震診断


 改修費、市町村の補助も

 住宅の地震に対する強さ、いわゆる「耐震性」を調べる耐震診断。1981年の建築基準法改正前に建築された住宅は、阪神・淡路大震災などの経験から、地震に弱いとされている。自宅の倒壊は、住む場所を失うだけでなく、下敷きになるなどして命の危険に直結することもある。

 県は、1981年の建築基準法改正前に建てられた木造住宅を対象に、市町村が行う耐震診断を支援している。診断は県内ほとんどの市町村で実施されており、県の講習を受けた耐震診断士が、自宅に出向いてくれる。県内では2005年度以降、2000戸を超える住宅が耐震診断を受けている。

 時間は2時間程度で、費用は約3000円。柱や壁、基礎の状態などを調べる。評点が1・0未満であれば、大地震で倒壊する可能性がある。0・7未満だとその可能性はさらに高くなる。

 今後30年以内に99%の確率で発生するとされている宮城県沖地震では、県内の最大震度は6弱と想定さており、1・0未満の住宅は大きな被害となる可能性が高い。できるだけ早く改修・補強することが望ましい。

 県によると、一般住宅の約35%、16万戸(06年度現在)で耐震改修が必要。15年度までに建て替えを含めて約7万戸の耐震改修を推進し、耐震化率80%を目指す計画だ。

 家の壁を増やしたり基礎を補強する耐震改修は100万―200万円ぐらいの工事が多く、平均すると120万円程度。県内では21市町村が工事に対する助成制度を設けており、費用の2分の1、60万円を上限に補助する例が多い。

 耐震改修工事は、壁の補強が中心となるため、住みながら工事を行うことがほとんどだ。

 自宅のリフォームを考えている人は、あわせて工事すると効果的。さらに、耐震改修を行うと固定資産税や所得税の控除や地震保険の保険料の割引も受けられる。バリアフリーや省エネ改修もあわせて行うと、住宅ローン減税も受けられる。

 工事を依頼する場合、信頼できる業者を選びたい。県は業者に講習を受けてもらい、「いわて木造住宅耐震改修事業者」(239者)に登録、ホームページで公開している。

 耐震診断・耐震改修の相談は、お住まいの市町村へ。



 
トップへ