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東日本大震災ロング企画
産業再生E
新しい価値創造 力を与える「よそ者」 2014年8月10日


 「地の利を生かして季節ごとに具を変えても面白い」「海藻を皮に練り込んだらどうか」。釜石産の海産物などを使った中華まんじゅう「海まん」の商品化に向けた会合。具や味付けなどのアイデアを出し合う関係者の言葉からは釜石への思いがあふれた。

 「海まん」プロジェクトは昨秋、釜石市の水産加工や水産物販売、しょうゆ・みそ製造販売など異業種6社が連携して始動。具は釜石の海で捕れた魚、皮には市の花「ハマユリ」から採取した酵母を使うなど「釜石」にこだわった地域ブランドづくりだ。

 同市で複数企業が関わる商品開発は珍しい。メンバーの一人で三陸いりや水産の宮崎洋之社長(44)は「各社の強みを生かして発信し、それぞれにメリットを生む。将来を見据えた地域の産業振興の形として前例をつくりたい」と年度内の販売に向けて意気込む。

 この試みを側面から支援するのが、同市の復興や地域振興を支援する釜石リージョナルコーディネーター(通称・釜援隊)の中村博充さん(27)=大阪府出身。商社での営業経験を生かし、外部の支援企業との調整や企画書、予算資料の作成などで支える。

 中村さんのように釜援隊は前職も出身地も違う、いわゆる「よそ者」集団だ。中村さんは「あくまでサポート役。コミュニティー形成や産業振興の仕組みを『形』で残すことが、地域づくりの観点からも意味があると思う」と期待を込める。

 海まんプロジェクトに加わる藤勇醸造の小山和宏専務(49)は「地元だけでは生み出せないものがある。外の視点、意見があり、それがさらに良い発想につながる」と実感する。

 「よそ者」が従来、沿岸地域になかった新しい視点と力を与えている。今年6月から民間出身の4人を「やまだ復興応援隊」に委嘱した山田町水産商工課の甲斐谷芳一課長も「観光や物産など産業再生に必要なのは第三者の視点」と強調する。

 企業による被災地支援も「ハード」から「ソフト」に転換しつつある。キリングループは2011年、継続的に被災地支援を行うため「キリン絆プロジェクト」を立ち上げた。

 震災直後は施設設備の復旧を中心に支援。13年からは農水産物のブランド育成や6次産業化の推進などで産業・地域活性化を後押しする。単なる「支援」でなく、事業を通じて社会課題の解決に貢献するCSV(共有価値の創造)の考え方だ。

 釜援隊など被災地への人材派遣に関わるRCF復興支援チーム(東京都港区)の藤沢烈代表は「東北は『復興』や『被災』ではない価値をつくらなければいけない時期にきている。そういう言葉をもう使わないという覚悟を決めないといけない」とあえて厳しい言葉で語る。

 「震災を機に東北、岩手が自立できれば全国が奮い立つ。そういうチャンスだ」

 問われているのは地域の自立。求められるのは新しい価値の創造だ。被災地での産業再生・振興の取り組みは、日本の地域再生のモデルにもなる。

 釜石リージョナルコーディネーター(通称・釜援隊) 釜石市が総務省の復興支援員制度を活用して全国から募集し、13年4月に導入した。メンバーは釜石リージョナルコーディネーター協議会と業務委託契約を締結。個人事業主として、前職の経験や民間感覚を生かして地域活動や産業振興などを支援する。現在第1期、第2期の12人がおり、第3期メンバーが10月1日から活動する予定。報酬・活動費は最長5年間、国から財政措置される。

【写真=釜石産の海産物などを使った「海まん」の商品化に向け、アイデアを出し合う関係者。震災を機に生まれたつながりを生かして産業振興を目指す=釜石市只越町】

(第21部終わり)


 
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