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【特集】 第49次観測隊 出発間近
はるか南極の地へ


 第49次南極地域観測隊(伊村智隊長)の日本出発が間もなくとなった。14日には最後の南極への航海となる観測船「しらせ」(砕氷艦、品川隆艦長、基準排水量約11600トン)が東京・晴海ふ頭を出港。本隊は28日に成田空港から出国し、オーストラリアから乗船して極地へと向かう。今回の観測隊は、50年を経た観測事業の次の50年を築くため重要な役割を持つ。地球温暖化など世界規模での環境対策の必要性が叫ばれる時代だ。地球の過去・現在・未来が見える「地球の窓」南極での観測は年々重要性を増している。 

(報道部・鹿糠敏和)


 「地球の窓」調査へ一丸

 今回の観測隊は夏隊30人、越冬隊29人、同行者8人。夏隊が越冬隊を上回るのは7次隊以来となる。観測者、研究者をはじめ、調理師、医師、建築土木、機械、通信などさまざまな職種の隊員で構成される。

今回限りで引退する南極観測船「しらせ」。大量の物資を乗せ、14日に東京・晴海ふ頭から最後の南極行に出港する=10月、東京・大井ふ頭
 25年にわたって南極観測を支えてきた観測船「しらせ」は今回限りで勇退する。後継船の利用は2009年となるため、08年出発の隊はオーストラリア船を利用することになる。ヘリコプターを使った夏期間の観測が大きく制限されるほか、輸送量が限られるため大規模な設営を進めることも難しい。

 こうしたことから、今回の夏期間の活動が重要になる。50次隊のための事前輸送はほとんど終わっているが、越冬成立に向けた輸送は重要な作業。発電機のオーバーホールや、ヘリポートの待機所建設など夏期間の設営も多岐にわたる。「しらせ」後継船に対応するための道路・コンテナヤードの建設も大事な工事の一つだ。

 今回は「昭和基地クリーンアップ4カ年計画」の最終年次にあたり、昭和基地の周辺清掃や廃棄物の持ち帰りも行う。

 観測面でも注目の項目がめじろ押し。地球温暖化の原因物質とされる二酸化炭素(CO2)について、高層大気中の濃度を調べるため小型気球の打ち上げを実施する。濃度の経年変化のほか、継続して行われている地表付近での濃度観測との関連性も注目されている。

 また、湖沼に生息するコケや微生物を調べるため潜水観測も実施する。地震計設置による地球内部の把握やオーロラ、ペンギンの研究にも当たる。越冬期間中も多くの分野の観測が繰り広げられる。

 日本隊が発見し、その後のフロンガスの国際的な規制につながったオゾン層の観測も引き継がれる。気象や測量、海洋などこれまでの継続で大きな成果を生み出した観測も実施する。

 今年から来年にかけては50年ぶりの「国際極年」に位置付けられ、さまざまな分野で国際協力して観測が行われる。今次隊で日本・スウェーデン共同トラバース隊は、スウェーデン隊と協力し、合計2800キロにも及ぶ内陸探査を実施。日本の昭和基地−ドームふじ基地−スウェーデンのワサ基地間で、氷床構造や氷床下の水脈を探る。

 ゴンドワナ大陸の起源を調べるセールロンダーネ山地地学調査隊は、3カ月間で本県の面積ほどある山地を踏査する。スノーモービルや岩石試料の一部を建設中のベルギー基地に預けることになる。

 このように多様で重要な観測が南極で行われる背景には、「地球の窓」と呼ばれる南極の特性がある。直接的な人為影響が少なく、平均的な地球環境を見ることが可能となる。雪氷から地球の環境変動史も分かる。オーロラや隕石(いんせき)が宇宙解明の糸口として注目される。
 「しらせ」最後の船出

 半世紀に及ぶ日本の南極観測のうち、半分の25年間を支えてきた観測船「しらせ」は今回限りで勇退する。14日に東京・晴海ふ頭から、約2万マイル、151日の最後の南極航路に出る。

 「しらせ」は28日にオーストラリアのフリーマントルに入港。49次観測隊の本隊は同日、成田空港から同港に向けて出国し、29日には乗船する。

 12月3日に南極に向けて出港。船上観測を行いながら、過酷な海域「暴風圏」を越え、砕氷しながら12月下旬の昭和基地接岸を目指す。

 接岸後は「しらせ」のヘリコプターを利用した沿岸での観測のほか、氷上輸送、設営作業などを展開。2008年2月1日に48次と49次の越冬隊が交代する。

 48次越冬隊と49次夏隊を乗せた「しらせ」は2月中旬に昭和基地を離岸する。東に進みながらの観測を経て、3月中旬に南極圏を離脱。3月20日にシドニーに入港し、同26日に日本に向けて出港する。観測隊は同27日に帰国し、「しらせ」は4月12日に晴海ふ頭に到着する。

 別動隊の日本・スウェーデン共同トラバース隊は、すでに航空機で南極大陸に到着。雪上車で約2800キロの内陸観測を行い、2月上旬に空路で帰国する。セールロンダーネ山地地学調査隊は11月18日に成田空港から出国。スノーモービルと山岳行での調査に挑む。

 (日程はすべて予定)

 ■重責担う 県人隊員■


 第49次南極地域観測隊には、本県から夏隊員で環境保全担当の中村伸一さん(29)=釜石市甲子町出身=と、越冬隊員で多目的アンテナ担当の熊谷英明さん(29)=一関市花泉町出身=が参加する。確かな技術が評価されて隊員となった2人の、南極での活躍が期待される。また同隊には、岩手日報社編集局報道部の鹿糠敏和記者(28)=久慈市侍浜町出身=が日本新聞協会の代表として、同行取材を行う。
 


 ◆子どもに夢伝える 多目的アンテナ担当 熊谷英明さん=一関・花泉出身

 初めて南極を意識したのは一関高専時代。求人票に「南極派遣」の記載がある会社を見つけ、極地のことを考え始めていた。「運命的な出会い」でNECテレネットワークス(本社東京、現NECネッツエスアイ)に入社。経験と実績を重ねて念願の南極行きとなった。

 担当は「多目的アンテナ」。人工衛星からのデータを受信し、確実に送り出すという重要な役割を担う。越冬隊員として、2009年まで滞在。越冬中の大気採集や磁力測定のために飛ばす無人飛行機の操縦も任された。

 無線操縦は子どものころからの趣味が生かされている。「好きなラジコンを駄目と言わずにやらせてくれた親に感謝したい。趣味がどういう形で生きるか分からないものですね」と笑う。

 仕事にかける思いは熱い。「ナショナルチーム」であることの誇りを胸に刻むと同時に「会社の先輩が南極で積み上げてきた技術と責任の大きさを感じる」と重みもかみしめる。

 ロボットコンテストの全国大会で準優勝した経験も持つ。「ロボコンも南極も目標を持って挑戦したから実現できた。夢を持って挑戦することの大切さを岩手の子どもたちにも伝えたい」。小学生とテレビ電話で結んで行う「南極教室」を楽しみにしている。

【写真=南極で操縦する無人飛行機の整備を学ぶ熊谷英明隊員】

 熊谷 英明隊員(くまがい・ひであき)一関高専卒。99年NECテレネットワークス(現NECネッツエスアイ)入社。川崎市。29歳。一関市花泉町出身。

 ◆「プロ」の誇り胸に 環境保全担当 中村伸一さん=釜石出身

 「初めは『遠い現場だな』っていう感覚でしかなかった。最近は大きな仕事を早くやりたいという気持ちが強くなってきた」と南極での仕事に意欲を燃やす。

 輸送用そりの製作を行った恒栄電設(本社東京)からの隊員だ。「環境保全」担当だが、現地では燃料タンクの溶接・配管工事、風力発電の工事などを担う。南極の短い夏期間に限られた人数で仕上げなければならないため、機械や建築などの設営業務全般に携わる。

 観測隊は設営、研究さまざまな分野の専門家集団。「みんなプロなんだと感心する」とほかの隊員に刺激を受けつつ「現場の工事ではやっぱり自分がプロ」とプライドをのぞかせる。南極では「ペンギンが現場近くに遊びに来るか楽しみ」と思いをはせる。

 隊員間の懇親の席ではムードメーカー。元高校球児の運動神経をいかんなく発揮し、ソフトボールやボウリングといった親睦(しんぼく)会でも活躍して場を盛り上げる。

 ヘルメットには大きく長男海斗君(6)、長女梨々羽ちゃん(4)の名前を入れる家族思いの父親。「正直寂しいね。でも頑張るしかない」。帰国後に海斗君の小学校の入学式に出席する日を思い浮かべながら、極地での任務をやり遂げる覚悟だ。

【写真=子どもの名前を入れたヘルメットで極地に挑む中村伸一隊員】

 中村 伸一隊員(なかむら・しんいち)釜石工高卒。97年恒栄電設入社。埼玉県鳩ケ谷市。29歳。釜石市甲子町出身。
事前準備みっちり

 第49次南極地域観測隊は今月末の出発に向け、さまざまな準備を積み重ねてきた。現地での活動を円滑で安全に行えるよう訓練や講習を実施。少数精鋭の「隊」としての一体感を出すため定期的に集まり、「ナショナルチーム」として意識の共有を図ってきた。事前活動の一部を紹介する。


無人観測飛行機の整備を学ぶ隊員(右2人)。南極では磁力計や大気のちりなどを回収する装置を搭載して飛行する=10月、長崎県・上五島空港 気球に充てんするヘリウムガスの取り扱いを学ぶ隊員ら=8月、大船渡市三陸町
南極上空の二酸化炭素濃度などを計測する小型気球の放球訓練を行う隊員ら=8月、大船渡市三陸町 慎重にプレハブでの建造物を組み上げる隊員。南極では設営の隊員だけでなく、研究者も工事に加わる場合が多い=9月、東京・国立極地研究所 「しらせ」にはトラックや雪上車など大型物資も次々と積み込まれた。合計約890トンの物資を積んで、最後の南極航路に向かう=11月、東京・大井ふ頭

◆第49次観測隊メンバー◆

 第49次日本南極地域観測隊のメンバーは次の通り。

 【隊長】伊村智(兼夏隊長)

 【副隊長】牛尾収輝(兼越冬隊長)、小山内康人(セールロンダーネ山地調査担当)、勝田豊(夏期設営担当)

 【越冬隊】長濱則夫、吉見英史、内田洋子、望月隆史、岩渕真海、水野太治、岡田雅樹、青山雄一、浅野比、青山朋樹、鈴木秀彦、岡山英樹、飯泉誠康、高澤直也、尼嵜慶次、軍司将男、麩澤正彦、野口徹也、近藤巧、佐々木菊雄、青堀力、橋本信子、當山陽介、赤田幸久、熊谷英明=一関市花泉町出身、稲葉充久、石際淳、金子宗一郎

 【夏隊】高江洲剛、杉本綾、高畑嘉之、榎本浩之、豊島剛志、高橋哲也、山本達之、工藤栄、藤田秀二、森本真司、堤雅基、戸田茂、馬場壯太郎、杉山慎、外田智千、小川麻里、中野伸彦、飯田高大、村上康幸、高田一三、井田浩、木村直之、林原勝美、谷口和幸、中村伸一=釜石市甲子町出身、阿部幹雄、南山泰之

 【同行者】齋藤佑介、田邊優貴子、辻本惠、足立達朗、鹿糠敏和=岩手日報社、久慈市侍浜町出身

 【同行者(交換科学者)】ジェラルド・マイケル・ドハーティー(オーストラリア、50次隊の船長予定者)、アンダース・トールビョールン・カーリン(スウェーデン、日本・スウェーデン共同トラバース隊)イバール・アンダーソン(同)
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